研究課題/領域番号 |
26670560
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中嶋 大 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70570670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | X線天文学 / CCDカメラ / ASIC / 放射線耐性 |
研究実績の概要 |
従来型X線CCDの裏面にCsIシンチレータを貼り付けたSDCCD単体の性能評価と放射線耐性試験を行った。X線CCDの電荷転送効率(Charge Transfer Efficiency:CTE)は、カメラシステムの分光性能を決定づける重要な性能指標である。一般にCCD中の電荷転送路内に、格子欠陥による電荷トラップが存在するためにCTEは1よりもわずかに小さい値を取る(典型的には0.99999)。今回のSDCCDは電荷転送路内にポテンシャル構造を持たせて転送路を狭めることで、CTE を従来素子よりもより1に近づけた(0.999999)。これにより分光性能が従来素子よりも有意に改善していることを実証した。 本研究で開発予定の硬X線TDIカメラは、放射線レベルの厳しい環境での使用も想定している。そこで我々は、千葉県の放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置(HIMAC)にて、100MeVの陽子線を素子に照射した。100億個以上の陽子線を照射したが、SDCCDのCTEは、やはり我々が開発した従来型X線CCD(次期X線天文衛星ASTRO-H搭載モデル)と比較しても有意に改善していた。 以上の成果により、SDCCDは素子単体で十分な性能を持っていることが実測出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が開発した、硬X線TDIカメラの核となるSDCCDセンサが、単体分光性能と放射線耐性の両面において十分な性能を持つことが実測出来た。
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今後の研究の推進方策 |
SDCCDは素子単体で十分な性能を持っていることが実測出来たので、次はX線発生装置と組み合わせてTDIカメラとしての動作を検証することが課題である。必要なエレクトロニクスは、ASTRO-H衛星用に我々が開発済の物を流用する。一方で治具などの機械部分は新たに作成して実験に臨む。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線CCD信号処理用ASICのカスタムパッケージの納入が予定よりも遅延しているため、支払いを次年度に回す必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
X線CCD信号処理用ASICのカスタムパッケージに使用する。
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