研究課題/領域番号 |
26670562
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
上田 真史 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40381967)
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研究分担者 |
檜垣 佑輔 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50598133)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子イメージング / ニコチン性アセチルコリン受容体 / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
本研究では、認知機能を客観的・定量的に評価可能な画像バイオマーカーとして、脳内ニコチン受容体イメージングの有効性を明らかにすることを目的とする。ニコチン受容体の生理機能として、記憶・学習・認知などの高次脳機能に関与することが報告されており、アルツハイマー病患者ではニコチン受容体の発現量が減少することが報告されている。しかしながら、その減少の程度と認知機能との間に相関があるかどうかは検討されていない。認知機能を客観的・定量的に評価しうる画像バイオマーカーが確立できれば、症状の進行把握、治療の有効性評価、認知機能改善を目的とする薬物の薬効評価などが容易に行えるようになり、臨床・創薬分野に非常に大きな意義をもたらす。 本年度の検討では、脳内に最も多く存在するニコチン受容体のα4β2サブタイプに着目し、それに結合するイメージングプローブである123I-5IAと小動物用SPECT装置を利用して、α4β2ニコチン受容体密度のインビボ定量解析法の開発に関する検討を行った。正常マウスに123I-5IAを投与し、イソフルラン麻酔下で60分間の連続SPECT撮像を行った。撮像終了後にマウスを覚醒させ、123I-5IAの体外排泄、放射能減衰を待つために1週間飼育したのちに屠殺し、脳を摘出して凍結薄切切片を作製した。その切片を3H-ニコチン溶液とインキュベートして各脳部位のα4β2ニコチン受容体密度を測定し、同一個体のSPECT画像における各脳部位の放射能集積と比較したところ、両者の間には有意な正の相関を認めた。 以上の結果から、小動物用SPECT装置によるマウス脳α4β2ニコチン受容体イメージングに成功し、その画像がα4β2ニコチン受容体密度を反映したものであることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標である小動物用SPECT装置によるマウス脳ニコチン受容体イメージングに成功し、その画像がニコチン受容体密度を反映したものであることを明らかとした。また次年度の実験に用いるアルツハイマー病モデル遺伝子改変マウスの飼育・交配も予定通り行った。 このように本研究は予定通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病モデル遺伝子改変マウスを用いて、①老人斑形成前、②老人斑形成後で認知機能は正常、③認知機能低下後、の3タイムポイントで、認知障害発症前後におけるニコチン受容体および糖代謝能の経時変化を追跡し、症状との関連を定量的に評価する研究を行う。 具体的には、新奇物質探索試験によりマウスの認知機能を評価し、さらに18F-FDGと125I-5IAの混合溶液を投与してデュアルオートラジオグラフィ実験を行い、糖代謝能とニコチン受容体密度を同一個体で評価する。また18F-FDGを投与してPET撮像を行い、18F-FDGの減衰後に123I-5IAを投与してSPECT撮像を行うイメージング実験も施行する。これを前述の①~③のタイミングで行い、ニコチン受容体がどの程度変化した時に認知障害が発症するのかを明らかとする。またその変化と症状の間の関連性を調べ、重篤度を客観的に評価できる画像バイオマーカーとしての可能性を評価するとともに、18F-FDGの結果と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの飼育開始時期が当初計画よりは後ろ倒しになり、かつ必要な匹数が増加したため、当初計画では今年度に計上していた飼育費用を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画では2年目にイメージング実験しか行わない予定であったが、より鋭敏に変化を捉えることができるオートラジオグラフィ実験も行うことで、認知機能の画像バイオマーカーとしての脳内ニコチン受容体イメージングの意義がより明確になると考えた。これにより必要なマウス数が増加するため、その飼育費用として使用する。
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