マウスで脂肪肝および脂肪肝炎~肝硬変を作製し,超音波顕微鏡像を光学顕微鏡と比較して,組織構造学的評価を行った。また,ヒト小児のヒルシュスプルング病のパラフィン包埋大腸組織を用いて同様に観察した。 肝臓組織は,安楽死後すみやかに切り出し医用超音波顕微鏡を使用して像を得た。80 MHzと320 MHz領域の超音波プローブを用いて画像と音響特性を取得した。光学顕微鏡像はヘマトキシリン・エオジン染色とアザン染色を行い観察した。ヒト大腸組織の観察では,パラフィンブロックを薄切し,観察直前に脱パラして超音波プローブを介して観察した。 320 MHz帯のプローブを使用した肝臓の超音波顕微鏡像の観察では,脈管構造や小葉構造がある程度識別できうる場合もあるが,同一の切片を用いて観察した光学顕微鏡像とは必ずしも一致せず,特に肝細胞への脂肪沈着の様子や線維の増生に関しては,分布や密度などに相違を認めた。線維化の進展の様子や肝硬変への進行の程度を,超音波顕微鏡のintensityに基づいた画像で評価することは困難であった。一方,音速の経時的推移を追った場面では,一過性に音速が低下したあと肝硬変の進行に伴って上昇する傾向があった。 消化管に関しては,大腸の粘膜層や筋層が光学像とほぼ同様に描出され,320 MHz帯のプローブ観察では,ヒルシュスプルング病を診断する際のポイントとなる神経細胞節細胞が同定できうることが判明した。ヒルシュスプルング病に関する神経節細胞の同定をex vivoで試みる点については実現できていない。
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