罹患数の大きな難治性がんである膵臓癌の局所制御および早期発見に役立つ高精度バイオマーカーを開発するために、最終年度に膵癌罹患者17名と健常者4名の白血球画分からRNAを調製し、放医研が特許保有する測定技術により高精度な大規模遺伝子発現解析を実施した。計画の目標症例数は10名であるが、治療経過や服薬状況などにより最終的に解析対象外となる被験者が生じうるので、余裕を持たせるため上記症例数を解析した。 8919種類のmRNA型転写産物の量測定をcDNA-AFLP変法にておこなった。各検体の発現パターンを距離法にて系統評価した結果、罹患者群と健常者群は別個のクラスタを形成した。特に群間差の大きい100転写産物に着目することで、両群の高精度な弁別が可能と考えられた。 当該手法で得られた結果は、前年度に実施した血漿由来miRNA解析による罹患群検出能力よりも遙かに高感度であった。前年度の解析は膵癌細胞そのものから放出される特異的miRNAの捕捉によるバイオマーカーを期待したものであり、本年度の解析は膵癌という疾患組織が血液細胞へ及ぼす遺伝子発現変化の検出によるバイオマーカー開発を期待するものである。 両解析を通して得られた結果からは、膵癌高感度バイオマーカーの開発研究を、罹患者血液細胞を対象として発展させることの重要性が判明した。今後は将来のスクリーニングへの応用を目指して、更なる症例集積と上述の100転写産物の絞り込みを行いたい。
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