研究課題/領域番号 |
26670571
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
中神 佳宏 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医長 (80347301)
|
研究分担者 |
小島 良紀 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 外来研究員 (20167357)
井上 登美夫 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80134295)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | がん幹細胞 / 低酸素イメージング / フマル酸呼吸 |
研究実績の概要 |
近年、幹細胞能力とがん形成能をあわせ持つ少数の幹細胞様のがん細胞(がん幹細胞)が発見され、これが遠隔転移やがん治療後の再発に関与していることが明らかとなり、がん幹細胞の性状、動態の把握、およびがん幹細胞をターゲットとした診断治療技術の開発は、がん克服のための重要課題となっている。また、がん幹細胞と低酸素状態との関連も報告がなされ、従来から核医学領域で注目されている低酸素病態イメージングの重要性が増しているものの、有効なイメージング技術が確立されていないのが現状である。我々は、低酸素状態のがん細胞が行うとされるフマル酸呼吸を画像化することを目的とし、11C標識フマル酸の自動合成法を検討したところ、低酸素病態イメージングを可能とする新規核種の開発に成功した。以下にその概略を示す。 標識フマル酸の合成法については、定同位体である13Cならびに長半減期(5730年)の14C標識体の合成が報告されている。 しかしながらこれらの方法を11C標識合成に応用することは、同位元素導入後の工程が長いこと、厳密な無水条件が必要なことからPET薬剤合成用の自動合成装置による標識反応には適さないと考えた。 我々は当初、グリニャール反応による11Cの導入を試みたが、いずれの方法においても目的とする臭化マグネシウム化合物は得られなかった。そこで、Rissらが報告している銅触媒によるBoronic acid esterのカルボキシル化 反応による合成を検討したところ、11C-フマル酸を自動合成装置を用いた遠隔操作で迅速に合成することに成功した。 本法により作られた11C-フマル酸は、担がんマウスを用いた実験で、動物用PET装置による画像化、ならびに解剖による体内分布の測定で、腫瘍への高い集積が認められた。今後ヒトでの有用性が認められれば、腫瘍PET検査のイメージング剤として広く利用される可能性がある。
|