研究課題
ラット正常肝をUW液中に48時間冷保存後、あるいは、その後新規灌流液を用いて2時間の低温酸素化灌流 (HOPE) を施し、あるいは、HOPE中に水素ガス投与を併用、あるいは、冷保存なしに、単離肝灌流装置で90分間再灌流した。再灌流後の胆汁産生量、門脈抵抗を単純冷保存群と比較すると、HOPE群では殆ど改善しなかたっが、HOPE中に水素ガス投与を併用すると有意に改善された。現在、phosphatase, 14-3-3ζおよび関連タンパクをウェスタンブロットで解析中である。マウス肝細胞株 (AML12) を用いて14-3-3ζ高発現細胞の作製を試みたが、培養中に細胞の状態が安定しないため、比較的安定しているヒト尿細管上皮細胞 (HK-2)を用いて14-3-3ζ安定高発現細胞を作製した。14-3-3ζ高発現細胞では、細胞増殖が加速され、細胞数当たりのATP量が有意に増加した。UW液による冷保存後にもATP量は高値を維持することが明らかになった。解糖やミトコンドリア複合体の阻害剤、あるいは、低温低酸素保存を行った結果、このATP量維持作用は代謝抑制によるものではなく、酸化的リン酸化の促進に起因していた。また、酸化的リン酸化の促進に伴い、酸化ストレスが増強され死細胞が増加した。抗酸化剤投与によってATP量はさらに増加したが死細胞数は減少し、逆に酸化ストレス源の添加によって、ATP量は減少し、死細胞数は著明に増加した。ラット肝臓から肝細胞、類洞内皮細胞、クッパー細胞、星細胞を初代培養する系を確立した。これらの細胞を持用いて、冷保存・再灌流をmimic したin vitro実験の系を確立した。現在、レンチウィルスベクターを用いて、これらの細胞に14-3-3ζを強発現させる系を検討中である。低温酸素化体外灌流後に移植するための至適グラフト処理、ラット肝移植モデルを作成した。
3: やや遅れている
2年度で検討すべきモデルのうち、14-3-3ζの高発現肝細胞株以外のモデルは全て作成を終えた。当初予定していた、AML12細胞はInsuli, Transferin, Sodium seleniteの添加を要し、細胞密度が高くなると性質が大きく変わってしまう場合があり、ストレスにも比較的弱い。tet-on/off のような二重安定発現株の作成には適していないのかもしれない。それゆえ、他の検討に使用しているSD ratの初代培養細胞を用いた検討を行うべく、予定を変更した。初代培養の手技確立と初代培養細胞への遺伝子導入の効率の低さゆえに、in vitroでの検討がやや遅れている。
単離肝灌流後の肝組織の解析を進める。肝移植によるProof of Conceptを完結する。肝構成細胞の冷保存、低温酸素化保存における14-3-3ζの機能を解析する。
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