研究課題/領域番号 |
26670572
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
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研究分担者 |
深井 原 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60374344)
木村 太一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90435959)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 虚血再灌流 / 臓器保存 / 抗酸化 |
研究実績の概要 |
ラットを心停止させ、30-45分後に肝を摘出し、UW液で6-24時間冷保存した。このグラフトを既存液(HTK液)を用いて2-6時間低温酸素化灌流 (HOPE) した。心停止45分群では、37℃で酸素化再灌流した際に広範な組織壊死、高度の障害を認め、肝修復効果を認めなかった。心停止30分、HOPE6時間では、再灌流後の組織壊死領域は縮小し、非心停止ドナーの48時間冷保存・再灌流時と同等程度の壊死範囲に抑えらえれた。しかし、胆汁産生は改善せず、37℃酸素化再灌流中の門脈抵抗は高値を維持した。HOPE中、あるいは、37℃再灌流時に水素ガスを投与すると、再灌流直後から門脈抵抗が軽減され、胆汁産生量が有意に増加した。水素ガスは温度やHOPE前、再灌流前の組織障害とは無関係に、門脈を弛緩させることが示唆された。すなわち、水素ガスのみでは障害機転を強力に抑制できなかったが、門脈弛緩により、グラフトのwashoutや酸素、エネルギー源、各種の薬剤を効果的に供給させるのに役立つと考えられた。また、新規灌流液を用いたHOPEでは肝保護作用が増強されたことから、水素ガスと新規灌流液の併用が有効と考えられた。 HOPEの有用性を証明するために、単離肝灌流モデル、in vitro実験モデルを作成し、種々の条件の肝組織、細胞を採取し、現在タンパク解析、水溶性小分子を解析中である。また、HOPEにおける14-3-3ζの機能も解析中である。さらに、新規灌流液、水素ガス投与における14-3-3ζの動態が、肝移植後の個体の生存率向上に寄与するかを検証するために、動物モデルを作成中である。これらの結果を得るために、研究期間を1年延長するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
14-3-3ζ高発現細胞株の作成に難渋している、また、ラット肝移植モデルを作成できる研究協力者の大学院生が急遽留学したため、後進を育成するのに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
予定通りの細胞実験を期間を延長して、H28年度に完結する。また、ラット肝移植モデルを作成できる研究者を引き続き育成する。H28年度に検討が困難であれば、治療効果の判定は単離肝灌流モデルと初代培養細胞で行うことに変更することも考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間延長承認:平成28年3月22日. 14-3-3ζ高発現細胞株の作成に難渋しており、また、ラット肝移植モデルを作成できる研究協力者の大学院生が急遽留学したため、動物実験よりも細胞実験を中心に行った。それゆえ、動物実験に要するコストが先送りされ、H27年度には余剰金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の如くH27年度には余剰金が生じたものの、全体構想の中で動物実験は不可欠であり、H28年度にモデル作成、効果検証を進める予定である。
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