シャペロン分子により生存シグナルを増強させる画期的な肝グラフト修復法の開発

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26670572
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
• 研究分担者: 深井 原 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (60374344) ; 木村 太一 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (90435959)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 移植・再生医療 / 外科 / 発現制御 / 臓器灌流

研究実績の概要

ラット正常肝をUW液中に冷保存後に種々の臓器修復法を施し、その臓器修復効果を検討した。まず、冷保存に使用する液はUW液と新規保存液を比較し、さらに、再灌流時に水素ガスを溶存させるか否かを検討した。これらの検討により、新規保存液の有用性と、保存法を問わず再灌流時の水素ガス投与の有効性が明らかになった。次に、新規灌流液 (新規保存液と同じ液) を用いて、UW液で冷保存後に2時間の低温酸素化灌流 (HOPE) を施し、その後再灌流した。新液によるHOPEは灌流中の門脈抵抗を著明に軽減し、再灌流障害を軽減した。また、HOPE中の水素ガス投与、さらにその後の再灌流時の水素ガス投与は相加効果があると考えられた。これらの方策を組み合わせることにより、少なくとも正常肝の長期冷保存では、冷保存肝の修復効果があると考えられた。
また、これらの臓器修復に関与すると予想されるシャペロン分子の高発現、ノックダウン肝細胞株を作成し、低温酸素化灌流を模した細胞実験を行ない、ある種のシャペロンが低温下での細胞生存、エネルギー産生に深く関与することが明らかになった。さらに、そのシャペロンの発現を増強させる可能性がある薬剤をスクリーニング、2種類の有望な物質を見出した。それらの薬剤を使用すると、1-3時間で保護性タンパクの活性が5-10倍に増されることが明らかになった。これらの結果は、肝グラフトの体外灌流中に薬剤性のコンディショニングが可能なことを示唆しており、コンディショニング効果が得られる温度、灌流時間、灌流液組成等の検討に着手するに至った。現在、特許出願に向けて詳細を検討中である。

研究成果

• [雑誌論文] Hydrogen gas ameliorates hepatic reperfusion injury after prolonged cold preservation in isolated perfused rat liver. (2016)
  • 著者名/発表者名: Shimada S, Wakayama K, Fukai M, Shimamura T, Takahisa T, Ishikawa T, Fukumori D, Shibata M, Yamashita K, Kimura T, Todo S, Ohsawa I, Taketomi A
  • 雑誌名: Artificial Organs 巻: 40 ページ: 1128-1136
  • DOI: 10.1111/aor.12710.
  • 査読あり
• [雑誌論文] 14-3-3ζ-mediated stimulation of oxidative phosphorylation exacerbates oxidative damage under hypothermic oxygenated conditions in human renal tubular cells (HK-2) (2016)
  • 著者名/発表者名: Fukai M, Kobayashi N, Ishikawa T, Wakayama K, Shimada S, Umemoto K, Ohtani S, MFujiyoshi M, Yamashita K, Shimamura T, Taketomi A
  • 雑誌名: Transplant Proc. 巻: 48 ページ: 1288-1291
  • DOI: 10.1016/j.transproceed.2015.09.066.
  • 査読あり
• [雑誌論文] 低温酸素化状態におけるタンパク機能制御 (2016)
  • 著者名/発表者名: 深井原，島田慎吾, 小林希、石川隆壽、梅本浩平、大谷晋太郎、山下健一郎、嶋村剛、武冨紹信
  • 雑誌名: Organ Biology 巻: 23 ページ: 173-179
  • DOI: 10.11378/organbio.23.173
• [雑誌論文] A Pilot Study of Operational Tolerance with a Regulatory T Cell-Based Cell Therapy in Living Donor Liver Transplantation. (2016)
  • 著者名/発表者名: Satoru Todo, Kenichiro Yamashita, Ryoichi Goto, Masaaki Zaitsu, Akihisa Nagatsu, Tetsu Oura, Masaaki Watanabe, Takeshi Aoyagi, Tomomi Suzuki, Tsuyoshi Shimamura, Toshiya Kamiyama, Norihiro Sato, Junichi Sugita, Kanako Hatanaka, Hisashi Bashuda, Sonoko Habu, Anthony J. Demetris, Ko Okumura
  • 雑誌名: Hepatology 巻: 64 ページ: 632-643
  • DOI: 10.1002/hep.28459
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] イメージング質量分析 (IMS)による阻血再灌流における新規予後予測マーカーの探索 (2017)
  • 著者名/発表者名: 橋本咲月、深井原、梅本浩平、木村太一、大谷晋太郎、中薮拓哉、早坂孝宏、三野和宏、惠淑萍、千葉仁志、嶋村剛、武冨紹信
  • 学会等名: 第29回 代用臓器・再生医学研究会
  • 発表場所: かでる２・７（北海道札幌市）
  • 年月日: 2017-02-25
• [学会発表] 臓器灌流法の先にあるべき技術の開発 (2016)
  • 著者名/発表者名: 深井原，島田慎吾，小林希，梅本浩平， 大谷晋太郎 ，中薮拓哉，三野和宏， 山下健一郎，嶋村剛，武冨紹信
  • 学会等名: 第43回 日本臓器保存生物医学会学術集会
  • 発表場所: 東京薬科大学（東京都八王子市）
  • 年月日: 2016-11-26
• [学会発表] 北海道における肝移植：過去・現在・未来 (2016)
  • 著者名/発表者名: 嶋村剛
  • 学会等名: 第6回 Trans-ARIAKE Liver Transplantation Forum
  • 発表場所: 熊本大学医学部付属病院 山崎記念館（熊本県熊本市）
  • 年月日: 2016-10-08
  • 招待講演
• [学会発表] イメージング質量分析によるラット脂肪肝虚血再灌流障害の評価 (2016)
  • 著者名/発表者名: 橋本咲月、深井原、早坂孝宏、梅本浩平、大谷晋太郎、白澤憲典、中薮拓哉、島田慎吾、惠淑萍、千葉仁志、山下健一郎、嶋村剛、武冨紹信
  • 学会等名: 第34回 日本肝移植研究会
  • 発表場所: 大雪アリーナホール（北海道旭川市）
  • 年月日: 2016-07-07
• [学会発表] 脳死肝移植を増やすために今できること：北海道における臓器提供・移植医療の理解に向けた取り組み (2016)
  • 著者名/発表者名: 嶋村剛、古川博之、藤堂省
  • 学会等名: 第34回 日本肝移植研究会
  • 発表場所: 大雪アリーナホール（北海道旭川市）
  • 年月日: 2016-07-07
• [学会発表] 肝細胞癌に対する生体肝移植：全国集計 (2016)
  • 著者名/発表者名: 嶋村剛
  • 学会等名: 第34回 日本肝移植研究会
  • 発表場所: 大雪アリーナホール（北海道旭川市）
  • 年月日: 2016-07-07
• [学会発表] 低温酸素化状態における14-3-3zetaによるエネルギー産生と細胞内シグナルの制御－ヒト尿細管上皮細胞株 (HK2) を用いた検討 (2016)
  • 著者名/発表者名: 深井原、小林希、梅本浩平、島田慎吾、若山顕治、大谷晋太郎、橋本咲月、藤好真人、山下健一郎、嶋村剛、武冨紹信
  • 学会等名: 第116回 日本外科学会定期学術集会
  • 発表場所: リーガロイヤルホテル大阪（大阪府大阪市）
  • 年月日: 2016-04-16
• [学会発表] ラット肝冷保存再灌流における重水含有臓器液 (Dsol) の保護効果～Autophagyと細胞生存・死シグナルへの影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 梅本浩平、深井原、島田慎吾、石川隆壽、大谷晋太郎、橋本咲月、藤好真人、若山顕治、山下健一郎、嶋村剛、武冨紹信
  • 学会等名: 第116回 日本外科学会定期学術集会
  • 発表場所: リーガロイヤルホテル大阪（大阪府大阪市）
  • 年月日: 2016-04-16
• [学会発表] 心臓死ドナーグラフトにおける水素ガスの肝保護効果の検討 (2016)
  • 著者名/発表者名: 石川隆壽、深井原、若山顕治、島田慎吾、梅本浩平、藤好真人、山下健一郎、嶋村剛、武冨紹信
  • 学会等名: 第116回 日本外科学会定期学術集会
  • 発表場所: リーガロイヤルホテル大阪（大阪府大阪市）
  • 年月日: 2016-04-16
• [学会発表] Time course of autophagy and oxidative phosphorylation during hypothermic oxygenated conditions and subsequent re-warming in human renal tubular cell line (HK2). (2016)
  • 著者名/発表者名: Fukai M, Ishikawa T, Wakayama K, Shimada S, Fujiyoshi M, Kimura T, Yamashita K, Shimamura T, Taketomi A
  • 学会等名: Transplantation Science Symposium Asian Regional Meeting 2016 (TSS)
  • 発表場所: KFC Hall（Tokyo, Japan）
  • 年月日: 2016-04-08
  • 国際学会