本研究は移植細胞内の分子機能・細胞内環境を制御することで「移植細胞保存時の生存能の維持と向上」、「移植後の細胞生存率の向上と機能維持」を目指すものである。最終年度である本年度は、主に「細胞生存に重要なAkt 分子の機能を光により制御するためのプローブ」の細胞内における生理機能への影響の検討、および同分子機能を「モニタリングするためのプローブ」の条件検討を進めた。 1.Akt分子機能の制御プローブ:前年度までに本プローブの基本的な機能検討・細胞への導入方法改善の検討を行い、候補として残った本プローブの安定発現細胞株を作出した。同細胞株におけるプローブを青色光照射し、外的ストレスに曝した際の生理状態を検討した。細胞を軽度の栄養飢餓培地および酸化的ストレス刺激状態でそれぞれ培養したところ、青色光非照射群では継時的に細胞傷害が引き起こされたが、光照射群ではその傷害は抑制された。またこの傷害抑制効果は、青色光の照射条件が影響することもわかった。同細胞株の細胞内分子シグナルについても、青色光照射後、確かにAkt下流分子が活性化していることが確認できた。 2.Akt分子機能をモニタリングするためのプローブ:これまで本プローブのデザイン・作製、改良を進めた結果、生きた細胞内でプローブシグナルを検知する方法が課題となっていた。これを解決するためにいくつかの方法を検討し、生細胞のまま、刺激直後のシグナル比較的効率良く検出する方法を見出した。また、プローブ評価の結果、各デザインによりプローブ活性化度合が異なることも明らかとなった。今後さらに感度の高いプローブを検討する必要がある。 本研究では、細胞内の分子機能を光で制御し、それをモニタリングすることが可能な一連のプローブを開発・検討し、その機能性評価を遂行することができた。この研究成果は光をもちいた新たな細胞療法への足掛かりになると考えられる。
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