研究実績の概要 |
近年切除困難な進行癌に対しRF焼灼治療が行われるが,外科切除に比し低侵襲ながらも熱傷関連合併症の危険を有し正常組織にも傷害を及ぼす.また切除不能進行がんでは対症療法しか残されておらず,今後QOLを考慮したさらなる低侵襲治療が望まれる.これらを克服するため多くの低侵襲治療が考案・研究され,43℃近傍でアポト-シスが誘導され抗腫瘍効果を示す温熱治療もその一つである.我々は従来から継続研究している磁場印可によりキュリー点で発熱が自動停止する感温性磁性体を用い,各キュリー温度に対応した融点を持つ基剤(薬剤封入)に含有させ1セットとした多段階温度設定薬剤含有磁性体ロッドの開発を目的として当該研究機関で以下の成果を得た. 43℃,44℃,45℃の融点に対応する基剤として,安定性の高いagar を選択,その濃度の最適解を評価し,0.100%,0.102%,0.103%,が概ね対応することが分かった.それぞれに対応するキュリー点を有する感温性磁性体を混合した結果,磁場印可に引き続くキュリー点(各々43℃,44℃,45℃)での自動定温加温により30分で基剤 の溶解が確認できた.引き続き,抗がん剤(PTX, DTX)が基剤に封入可能かを検証し,PTX 30µM,DTX 30µM は混入可能であった. 次年度は引き続き,細胞培養実験による薬剤放出と殺細胞効果の検証を行い,可能であれば動物実験まで発展できることを目標とする.
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