研究課題
腎移植後の慢性拒絶反応では、病態形成の一因に、アロ抗原特異的メモリーT細胞による慢性炎症の惹起と、慢性炎症による腎の線維化があると考えられている。現状では、慢性拒絶反応の予防として、長期にわたる免疫抑制剤の多剤投与が行われている。しかし、副作用も少なからず存在することから、慢性拒絶反応を特異的に予防できる方法の開発が望まれる。DNAM-1は、T細胞上に発現する活性化受容体である。私達はDNAM-1遺伝子欠損マウスを用いて、DNAM-1が生体内においてアロ免疫応答を促進することを観察した。また、DNAM-1欠損CTLの機能解析より、DNAM-1は、抗原特異的免疫記憶の成立にも重要な役割を担っていることを明らかにした。そこで、生体内におけるアロ免疫記憶の成立においてもDNAM-1が関与しているかどうかを調べるために、野生型マウスとDNAM-1欠損マウスに皮膚移植を行い、移植片を拒絶したマウスよりT細胞を採取して、これをRAG-1遺伝子欠損マウスに移入し、さらに心臓移植を行った。その結果、DNAM-1欠損T細胞を移入したマウスの方が早く移植心臓を拒絶し、DNAM-1がアロ免疫記憶の成立にも重要な役割を担っていることが明らかになった。次にC57BL/6系統のDNAM-1遺伝子欠損マウスならびに野生型マウスにBALB/c系統の腎臓を移植し、腎機能を観察した。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスをレシピエントマウスにした場合には、移植腎の腎機能の低下が軽減されることが観察された。また、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは移植腎への浸潤細胞数が有意に軽減されていた。このことから、DNAM-1が腎移植後の拒絶反応に重要な役割を担っていることが示唆された。
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PloS One
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