研究課題
移植片の生着と拒絶の双方に関与する免疫細胞として、CD4陽性T細胞が知られる。我々は再生臓器移植に伴う免疫反応をコントロールすることを目標に、申請者が開発したiPS細胞由来の再生T細胞分化誘導技術を用いて移植片に特異的なヘルパーT細胞や制御性T細胞を誘導し、その機能を評価することを本挑戦的萌芽研究で試みた。まず3種の抗原を対象に、それぞれに対して特異的な反応性を示すCD4陽性T細胞クローンを樹立し、iPS細胞へと初期化させた。既存の分化誘導技術を適用してもCD4陽性T細胞への分化に困難を極めたが、遺伝子改変技術を用いることにより、HLAクラスII拘束性に標的抗原を特異的に認識するCD4陽性再分化T細胞を誘導することに成功した(CD4陽性細胞の製造方法 特願2015-203482)。具体的には同細胞は、抗原特異的に増殖応答とサイトカイン産生を示すのみならず、樹状細胞を成熟させることによって、抗原特異的細胞傷害性CD8T細胞を誘導する能力を示した。これらの細胞が示すアジュバント作用は、抗原特異的I型ヘルパーCD4T細胞が示すそれと類似していた。実際、CD4陽性再分化T細胞によって樹状細胞を介して産生された抗原特異的CD8T細胞、標的抗原を発現した細胞株を移植されたマウスへと投与すると、移植片はすみやかに拒絶された。続いて移植片に対する拒絶反応を抑制するCD4陽性T細胞を再生することを目的として、分化誘導方の開発を試みた。最適化の過程ではあるが、T細胞受容体刺激により抑制性のサイトカインを産生する再分化T細胞を得ることに成功している。また、同種移植片のソースとなるHLAハプロタイプ一致iPS細胞の供給を受け、同細胞をソースとする再生T細胞の分化誘導に着手した。標的抗原に対するT細胞受容体遺伝子導入を併用し、所望の抗原反応性を持たせることに成功している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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