研究課題
大腸癌局所に浸潤するFoxP3+CD4+T細胞の解析を行い、制御性T細胞による免疫抑制が大腸癌の免疫応答および予後に与える影響を検討した。ヒトでは制御性T細胞のマスター遺伝子FoxP3発現が、ナイーブT細胞の活性化によっても誘導されるため、FoxP3発現のみでは制御性T細胞を定義できず、適切な解析方法が求められていた。FoxP3とT細胞活性化マーカーCD45RAの発現レベルによりFoxP3+CD4+T細胞を3つに分類し、制御性T細胞を厳密に定義し、大腸癌局所の免疫応答解析に適応した。大腸癌組織にはFoxP3陽性でありながら、免疫抑制活性を持たない細胞が多数存在していた。これらのFoxP3+non-制御性T細胞の存在は、特定の腸管細菌により炎症性サイトカイン(特にIL-12) が誘導されることと関連していた。また、免疫抑制活性を持つ本来の制御性T細胞に焦点をあてると制御性T細胞浸潤は大腸癌でも予後不良因子であり、制御性T細胞が大腸癌免疫療法の標的となる可能性が示された。これまで大腸癌では制御性T細胞の抗腫瘍免疫応答への役割の違いが報告されていたが、従来の方法ではFoxP3陽性non-制御性T細胞と本来の制御性T細胞を区別することはできなかったことが、大腸癌で制御性T細胞の役割が明らかにされなかった理由であると考えられた。今後は機能が異なるFoxP3+T細胞が存在していることを十分に考慮して、それぞれのがん腫での制御性T細胞の役割を解析する必要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
大腸癌組織の集積も順調に進み、予定通り解析を進めることができた。それに伴い予備検討の結果をさらに発展させ、FoxP3陽性制御性T細胞とnon-制御性T細胞の予後に与える影響を解析することができた。またこの解析結果に基づき、大腸癌を免疫学的に2群に分類し、それぞれの腸内細菌叢の解析および遺伝子発現の違いも順調に進んでおり、研究全体としておおむね研究計画通り順調に進展していると考えられる。
大腸癌の症例集積および解析は前述の様に順調にすすんでいるため、計画通りFoxP3陽性制御性T細胞とnon-制御性T細胞の存在に基づいた大腸癌分類での遺伝子解析にすすみ、両群での遺伝子発現の違い等の解析を進める。これにより腸内細菌叢の違い等の環境因子がもたらす要因による大腸癌の分子生物学的相違を解明する。またこれらの2つの大腸癌での予後の違いを通じて、免疫学的に2群に分類された大腸癌のうちがん免疫療法が介入すべき患者群および標的とすべき細胞を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 9件) 備考 (1件)
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