研究課題
抗腫瘍免疫応答を抑制する細胞群として、制御性T細胞は大きな注目を集めている。制御性T細胞は、FOXP3をマスター遺伝子とする免疫抑制を司る細胞で、腫瘍内において種々の抗腫瘍免疫応答を抑制することにより、がんが免疫系からの攻撃を逃れるため(免疫逃避機構)の重要な因子と考えられている。よって多くのがん腫において、腫瘍内浸潤制御性T細胞の存在は予後不良因子として報告されてきたが、大腸癌においては予後良好因子であるという他のがん腫とは相反するような報告もなされており、大腸癌に対する制御性T細胞の役割は十分に明らかにされてこなかった。本研究により、大腸癌に浸潤するリンパ球に従来制御性T細胞と見なされていたFOXP3陽性細胞の中に、FOXP3を弱発現する細胞群が多数存在し、抑制能を持たない活性型T細胞でありことが明らかになった。これらの細胞は、大腸癌に付着する腸内細菌により腫瘍内で増加した炎症性サイトカインによって誘導された。さらに、この様なFOXP3を弱発現する細胞群が多数浸潤する大腸癌は予後が良好である一方、抑制活性をもつ制御性T細胞が多数浸潤する大腸癌は他のがん腫と同様に、制御性T細胞の浸潤が予後不良因子になることを示した。がん免疫の最前線である腫瘍内において、これらの細胞群を明確に同定できることは、制御性T細胞を標的としたがん免疫療法を開発する上で、標的がん腫を正確に抽出するための非常に有用なマーカーとなりうる。特に大腸癌では未だ一部の腫瘍でしか、がん免疫療法の効果が認められないことが分かっており、本研究成果により新たな標的患者群が明らかになるとともに、制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の可能性が示唆された。加えて、腸内細菌が腫瘍内炎症を介して腫瘍免疫を亢進する可能性があることが示され、腸内細菌をコントロールすることが大腸癌治療にも応用できる可能性が期待された。
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