研究実績の概要 |
細胞膜透過ペプチドであるTATペプチドとデキストランを用いてTATデキストラン複合体の作成を行い、単離したミトコンドリア表面の修飾を行った。10,000-460,500の分子量のデキストラン分子とTATペプチドを用いてTATデキストラン複合体を作成した。作成したTATデキストラン複合体を単離ミトコンドリアと反応させ、ゼータサイザーを用いてゼータ電位の測定を行った。結果、TATペプチドを重量比3.25倍の分子量40,000のデキストラン分子に結合させたTAT-デキストラン複合体を用いることにより、効率的に単離したミトコンドリアが持つ陰性表面電荷を中和できることが明らかになった。このTAT-デキストラン複合体で修飾を行った単離ミトコンドリアをヒト間葉系細胞株やラット胎児心筋細胞と共培養を行い、細胞内に移行した外来性ミトコンドリアをフローサイトメーターを用いて定量を行った。その結果、単離ミトコンドリアのみと共培養を行った場合と比較して、細胞内に有意に多くの外来性ミトコンドリアが取り込まれることが明らかになった。 次にミトコンドリア障害モデルとして、in vitroでのラット胎児心筋細胞を用いた虚血再灌流障害モデルを用いて実験を行った。単離ミトコンドリアのみの投与によっても障害は軽減される傾向にあったが、統計学的には有意な効果ではなかった。一方、作成したTAT-デキストランで修飾した単離ミトコンドリアの投与では、有意に心筋細胞のアポトーシスが減少し、関連する遺伝子発現も有意に変化していることが明らかになった。
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