ミトコンドリア細胞移入がマクロピノサイトーシスを介して行われることを我々は報告してきたがその効率の低さは解決すべき課題である。特に株化細胞においては高効率にミトコンドリアを導入できるものの、初代培養細胞においてはそのドナーソースに関わらずミトコンドリア導入効率が低いことが明らかとなった。そこでHIV-1由来のアルギニンリッチな細胞膜透過性ペプチドTAT(GRKKRRQRRRPQ)に着目し、細胞内小器官であるミトコンドリアを初代培養細胞へ高効率に導入できる系を構築することを目的とした。その際、TATをミトコンドリア上に配置するのにデキストランを用いた。H27年度はTATとデキストランを結合させる系を構築した。また、このTATデキストランを用いてラット新生児心筋細胞に対してミトコンドリアの導入効率とアポトーシスの指標となるTUNEL抑制率について検討した。H28年度はミトコンドリアを効率よく導入したラット新生児心筋細胞の生物活性を測定するための系を新たに構築し、ミトコンドリアの導入による細胞活性の回復について検討してきた。またTUNEL以外の定量可能なアポトーシス解析系、細胞の三次元構造解析の系も構築した。 今後はマクロピノサイトーシスの評価も構築し、総合的なミトコンドリア導入による細胞活性評価を試みていく予定である。
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