研究課題/領域番号 |
26670587
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大橋 一夫 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40364062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞療法 / iPS細胞 / 肝細胞 / 組織工学 / 薬物代謝 |
研究実績の概要 |
iPS細胞からの分化誘導細胞の臨床展開を模索する現状において、より安全な治療法開発を目的として、本申請研究においては、iPS肝細胞を注入移植して拡散させるのではなく、生体内において移植細胞を配置を制御することで拡散を防止し、かつ、移植細胞を簡便に摘出することが可能な細胞移植治療の開発を目指す。細胞をマイクロファイバー内に列状充填した肝組織を作製して移植するという、極めてユニークな治療法開発である。日本が誇る科学技術としてのiPSテクノロジーが技術革新を続ける現状において、より安全なかつ独創的な治療法の開発は臨床への橋渡しを加速させることを目的として平成26年度の実験を行い、以下の知見を得た。 (1)マイクロファイバー組織体の作製とマウス内移植 連携研究者(山田)および申請者が中心となり既開発したマイクロフルイディクスを基盤としたマイクロ流路デバイスシステム(Yamada M, Ohashi K, et al. Biomaterials 33:8304-8315, 2012)を用いて、直径60-200μmの間の任意の径を有するマイクロファイバーの作製法の確立と、マイクロファイバーのマウス内移植実験を行った。マイクロファイバーの直径の調整は、主注入路(本来は細胞懸濁液を注入する流路)および、ゲル化溶液注入路の注入速度の調整によっての調整が可能なことが判明した。次いで、直径約100μmのマイクロファイバーをマウス腹膜直下および肝臓内への移植手術手技を工夫することによって、移植手技を確立した。 (2)HepG2充填マイクロファイバー肝組織の作製 iPS肝細胞のマイクロファイバー内充填の条件設定を目的として、HepG2細胞充填マイクロファイバー肝組織体を作製した。HepG2細胞を6x10e5~12x10e5/minの速度にて注入することで、ファイバー内にHepG2細胞を単層縦列配置させ得ることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究において、アルギン酸マイクロファイバーのマウス内移植の手技が確立できたことから、本研究の最大目標であるマイクロファイバー内にiPS由来肝細胞を充填した組織体の移植(平成27年度実施)のめどが十分にたった。また、HepG2細胞をレファレンス細胞として用いてマイクロファイバー内充填の条件選定も実施できたことから、平成27年度実施計画中のiPS由来肝細胞を充填したマイクロファイバー作製実験が加速されるものと推測できる。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 平成26年度の研究成果を確かなものとし、また、さらに発展させるため、マウス体内移植マイクロファイバーの組織学検索や周囲等との癒着検討、様々な移植部位探索をすすめ、至適な移植法を確立する。さらに、平成27年度は、iPS由来肝細胞をマイクロファイバー内に充填する実験を展開することによって、高肝機能を発揮するiPS細胞由来の肝組織体を作製し、前述の移植法とコラボレーションさせることによって、生体内での高機能肝組織体作製技術の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロファイバーの作製実験が当初予想より早く至適化ができたため、消耗品費用の節約ができたため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を当初計画より多数のマウス移植実験およびに移植組織の機能解析に充てることによって、治療法としてさらに意義の高いiPS由来細胞を用いた治療法の確立につなげる予定である。
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