研究課題
前年度までに筆者らは、転移性乳癌細胞株において細胞内二大タンパク質分解機構であるユビキチン(Ub)・プロテアソーム系とオートファジー・リソソーム系とを同時に阻害することで小胞体(ER)ストレス負荷を介したアポトーシスが効率的に誘導されることを確認した。この結果を踏まえて、さらに筆者らはアグリソーム形成における不良タンパク質(unfolded protein)の微小管輸送の役割に着目した。乳癌細胞株MDA-MB-231、MDA-MB-468に対しプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ(BZ)を添加培養すると、核近傍の微小管形成中心(MTOC)にvimentin、Ub、p62を含むアグリソームが形成されることを確認した。そこで、微小管脱重合阻害剤であるパクリタキセル(PTX)と微小管重合阻害剤のビノレルビン(VNR)の各薬剤をBZと併用したところ、PTXに比べVNRがアグリソームを効率的に阻害していることが示された。また、BZ+VNR併用はBZ+PTX併用に比べて、より強力にMDA-MB-231細胞、MDA-MB-468細胞のアポトーシスを誘導し、かつ、ERストレス関連遺伝子GRP78, CHOPの発現量も増強させた。さらに、BZ+VNR併用に加えてオートファジー阻害効果を有するマクロライド系抗生物質アジスロマイシン(AZM)を添加することで(BZ+VNR+AZM)、さらなる殺細胞効果の増強が認められた。以上の結果から、細胞内の不良タンパク質の処理過程において、Ub・プロテオソーム系、オートファジー・リソソーム系のに加えアグリソームの三者間での巧妙な細胞内ネットワークの存在が示唆され、これを効率的かつ計画的に遮断することでERストレス負荷を介した新規転移性乳癌治療法の構築の可能性が示された。
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International Journal of Oncology
巻: 49(5) ページ: 1848-1858
10.1371/journal.pone.0164529.
http://www.tokyo-med.ac.jp/target/