研究課題/領域番号 |
26670598
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須並 英二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70345205)
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研究分担者 |
石原 聡一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00376443)
山口 博紀 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20376445)
渡邉 聡明 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80210920)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / バイオマーカー / サーベイランス / 遊離DNA |
研究実績の概要 |
大腸癌の発生は炎症性腸疾患長期経過症例における重大な問題となっている。そのサーベイランスは、現状では大腸内視鏡でのみ可能であるが、識別困難なケースも多い。そのため前癌病変であるDysplasiaの指摘がサーベイランスの目標とされているが、その方法は現状では内視鏡に限られている。IBDサーベイランスには分子生物学的アプローチを背景とする新たな展開が必須である。サーベイランスとしての臨床応用において重要なことは、低侵襲、繰り返し採取可能であることであるが、候補は、生検材料、新規材料として糞便、血液であり、その際特に微量DNAであることを意識した検討が重要である。
まず、IBD患者のサーベイランスにおける内視鏡生検材料にてER, MINTs, P16, RUNX3等のメチル化およびLINE1のメチル化の定量を行い、癌化リスクとの検討を行うために、生検材料における上記測定の最適化を行った。癌化症例の解析により、サーベイランスの応用可能性を検討した。
次いで、新規材料として糞便、血液での検討に備え、現在資料収集を行っているが、微量で質のよくない検体であるため、その再現性、安定した定量性を追求することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IBD癌化患者20名の生検材料(病変部に限定せずにstep biopsyが施行されているため、非癌部の生検材料も同時に利用可能。)を収集した。健常人正常粘膜生検組織、IBD非癌患者生検組織(同一患者の経時的生検材料を含める)、IBD癌化患者(以前よりのサーベイランスにより経時的に収集された腫瘍部と非腫瘍部の生検材料)を対象として、メチル化定量の対象遺伝子としては、これまでIBD癌化のマーカーとなり得る異常メチル化の報告されているp16, RUNX3, MINTs, HPP, ESR1, COX2, E-cadherin に加え、大腸癌発癌の早期より非メチル化の認められるLINE1を選択し検討を行った。 糞便・血液サンプルの収集、遊離DNA 抽出を行う。健常者30名、潰瘍性大腸炎非癌患者50名、潰瘍性大腸炎癌化患者20名程度を対象とすべく収集している。血液中遊離DNAの抽出対象は過去の検討に基づき血清とし、具体的には、血液採取後早期に遠心後、フィルターをかけ血球(細胞)成分を除去し凍結保存している。糞便からの遊離DNAの収集方法としては、主として大腸内視鏡時の残留液を回収することで行う。遊離DNAの抽出は上記に準じ、得られた血液中および糞便中遊離DNAに関して再現性定量性を確保すべく予備検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
以上の検討で、糞便や血液中遊離DNA総量(遊離DNA濃度)が、有用であるかが判明するが、更に各種サイズのLINE1遺伝子に関する量的検討を行うことで、DNA integrityが有用であるかどうかが判断される。それと同時に今回の検討の中心であるLINE1methylation定量に際し使用するアンプリコンサイズの目標値が決定される。特に、健常人あるいはIBD非癌患者とIBD癌化患者の差の大きいアンプリコンサイズを目安にLINE1 MSP用のprimerをデザインする。 LINE1のメチル化の程度を表す指標としてLINE1methylation copy number とLINE1unmethylationcopy numberからLINE1hypomethylation indexを計算する。LHIは癌のマーカーになりうるか、癌患者のスクリーニングに有用であるかどうか、どのような臨床病理学的因子と相関が認められるか、更には化学療法効果判定や予測に役立つかを検討し解析を行う。ここで検討すべき重要な事項としてはcut off値である。適切なcut off設定のため健常人症例は30例以上を目標とするが、可及的に多く収集する必要がある。 LINE1のメチル化に加えてp16, RUNX3, MINTs, HPP, ESR1, COX2, E-cadherin メチル化定量も行うこれらのメチル化異常に関しては、頻度、程度等比較的高率ではないことが予想されるため、サーベイランスとしての有用性の向上のためにマルチマーカー化することを検討する。
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