研究課題
幹細胞研究の発展により、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)や組織幹細胞(脂肪組織由来間葉系幹細胞)から様々な組織への分化誘導法が開発され多数の報告がなされている。しかしながらこれまでの分化誘導の報告の大多数が生体外において作成し、細胞療法を行うためのソースとしては有用であるが、臓器障害を有し、移植以外の選択肢の無い多くの患者では細胞療法のみで完全に臓器不全を補完することは極めて困難である。そこで三次元の組織の作成を目指し膵臓の無いマウス体内でのラット膵臓の作成や、膵臓の無いブタに健常なブタの膵臓を作成する報告がなされ、異種の受精卵内にヒトiPS細胞やES細胞を移植し発生させることで異種の体内でヒトの臓器を作成することが有望であると考えられている。マウスES、iPS細胞は異種動物の細胞とキメラ化し、その状態のまま正常に受精卵を発生させ個体を得ることが可能であるが、マウスES細胞よりも発生の進んだマウス胚盤用上層幹細胞(EpiSC)はキメラ系性能を持た無いことが知られている。そしてヒトES、iPS細胞はマウスES、iPS細胞と性質に大きな違いがあり、マウスEpiSCとより多くの共通点を持つことからキメラ系性能を持たないと考えられている。そこで、本研究では受精卵由来新規マイクロRNAを同定しキメラ形成能を有するヒトiPS細胞の樹立を目指している。
2: おおむね順調に進展している
候補microRNAの更なる絞り込み、誘導microRNAの決定(ハイスループットスクリーニング)12種類のmicroRNAのレンチウイルスベクターを作成した。作成したレンチウイルスをヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)へ様々な組み合わせで導入、その後マウスES細胞の培養条件で培養を行い培養20日目に多能性関連遺伝子及びタンパク質を遺伝子発現解析、免疫染色、ウエスタンブロッティングで確認、またXistの発現レベルによりX染色体の不活化状態の確認などを行なった。また分化能を確認するために樹立したヒト多能性幹細胞を分化培地で培養し様々な細胞に分化可能であることを確認した。
マウス胚、ブタ胚の8細胞期〜胚盤胞期に蛍光標識したヒト多能性幹細胞を移植し動物性集合胚の作成を行う。倫理的な問題を考慮し、これらの胚は子宮に戻すことはせず試験管内培養を行うためヒトとのキメラ個体が発生することは決して無いキメラ胚培養後細胞を酵素を用いてバラバラにしセルソーターを用いて蛍光標識のあるヒト由来細胞と多種動物由来細胞を分け、ヒト由来細胞の遺伝子発現解析、タンパク質発現解析を行いキメラが形成されることの確認(他種動物胚内でヒト由来細胞があらゆる組織の細胞に分化していることの確認)を行う。また、樹立した多能性幹細胞を様々な成長因子(LIF, Activin, FGF2等)や阻害剤(GSK3i, ERKi等)様々な濃度、組み合わせで培養し、形質を維持したまま安定して培養出来る最適な条件を検討し、確立することで将来キメラ動物を用いてヒト臓器を作成する際の細胞の安定供給技術を確立する。
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