研究課題
我々はプロテオミクス解析により、肝細胞癌の特異的抗原蛋白としてHSP70を同定し、HSP70-mRNA導入DC療法のPhase Iを切除不能・再発肝細胞癌患者を対象に施行した結果、9例中2例に腫瘍の完全消失(CR)を得た。そこで、樹状細胞療法と比較して、より普遍的な癌ペプチド療法に転換することを考え、HSP70由来ペプチドを探索した。始めに、HSP70 peptide のHLA-A*2402とA*0201に対するAffinity 検索を行い、高いAffinity を有する15種類の候補をピックアップしてペプチドを合成した(ペプチドのシークエンスは特許申請中のため記載できない;特願2014-206730(平成26年10月 7日))。また、15名のHealthy Volunteer でHLAを解析し、A*2402 とA*0201 をもつ人を複数同定した。次に、候補のペプチドをVolunteerのPBMCとIL-2存在下で10日間共培養し、その間に樹状細胞を誘導した。PBMCからCD8陽性細胞を抽出し、誘導した樹状細胞にペプチドをパルスしてCD8陽性細胞と7日間共培養した後、CD8陽性細胞を、ペプチドをパルスした腫瘍細胞と共培養してELISPOTを行った。その結果、A*2402かつA*0201に結合してELIPOT反応数を増加させる3種類のペプチドを同定した。本研究により、すでに臨床効果が得られているHSP70-mRNA導入樹状細胞療法のproof of concept (POC) が得られ、さらに肝細胞癌に対する簡便な免疫療法の候補として3種類のHSP70由来ペプチドが同定された。癌ペプチド療法は現在日本を中心に開発が進んでいるが、その最大の利点は汎用性が高いことであり、世界的な展開が行いやすく、肝細胞癌患者への大きな選択肢の提示ができ、国益に叶う結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、当初の計画の通り、ペプチドについて3種類を同定することができており、おおむね順調に進展していると考える。
今後、HSP70樹状細胞療法を行った患者のPBMCを用いて、同様のアッセイを行う。また、Cr releasing assay によりペプチドによって腫瘍細胞を破壊するリンパ球が誘導されることを確認する。さらに、Immune check point阻害剤や免疫活性化アジュバントとの併用効果を検討して、さらに優れたペプチドワクチン療法の開発を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Anticancer Res.
巻: 35 ページ: 997-1007
BMC Cancer
巻: 27 ページ: 722
10.1186/1471-2407-14-722