本研究は胸腹部大動脈瘤手術時に合併する虚血性脊髄障害に対する脊髄保護法の開発を目的とした。ナノバブル発生技術を用いた酸素化人工髄液を作製し、それをウサギの髄腔内に持続注入することで、脳脊髄液酸素化を達成した。さらに、その状態で腹部大動脈をバルーン閉塞させることで、脊髄虚血を発生させると、脳脊髄液中の酸素分圧の上昇と相関して、下肢運動機能の温存が認められた。そのことから、脳脊髄液を酸素化することによって、虚血に伴う脊髄障害に対する脊髄保護効果がもたらされることが示唆された。さらなる検討を行い、胸腹部大動脈瘤手術に合併する脊髄障害に対する保護戦略の一助となることが期待される。
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