研究課題/領域番号 |
26670620
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
野口 亮 佐賀大学, 医学部, 助教 (70530187)
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研究分担者 |
伊藤 学 佐賀大学, 医学部, 助教 (50555084)
森田 茂樹 佐賀大学, 医学部, 教授 (70243938)
野出 孝一 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359950)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心筋再生 / 組織工学 |
研究実績の概要 |
本年度の実験進捗状況であるが、前半期に京都大学iPS細胞研究所(CiRA)のプロトコールを用いてSNLフィーダー細胞の準備および、ヒトiPS細胞(201B7株)の維持培養技術を確立した。また後半期は、そのヒトiPS細胞の心筋分化技術確立後を見据えて、市販されているヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて、スフェロイドを作製し、解凍後の日数や拍動日数(平均30日程度)などを確認した。そして解凍3週間目にスフェロイド同士の融合を試みて、翌日と5日後にCa蛍光色素を反応させたところ、翌日には融合してもスフェロイド同士の蛍光輝度の同期は確認できなかったものが、5日後には融合に加え、蛍光輝度の同期も確認できた。これは将来的にさらに多くのスフェロイドを融合させても電気的同期が期待できる可能性が示された。またヒトiPS細胞由来の心筋細胞・内皮細胞、ヒト初代培養の皮膚線維芽細胞は混ぜると、心筋100%のスフェロイドと比べ、凝集が改善することは確認できており、今後はその細胞比率などの検討が必要である。 3次元化グラフト作製後の動物移植を見据え、まずはSDラット(10週齢)を用いて心筋梗塞(AMI)作製を行った。より確実・安全に作製できる手技を確立した後に、Nude rat(SCID,10週齢,オス)を用いてAMIモデル作製を行った。Nude ratに関しては、少なくとも5匹中4匹は心臓前壁の壁運動低下を確認し、AMIの確立を行い、5匹とも死亡はなかった。 設備拡充等:技術補助員2名によるヒトiPS細胞の大量培養や免疫染色などの手技操作増加に応じて、新たにクリーンベンチを拡充した。さらにスフェロイドや組織病理などの機能評価目的の蛍光顕微鏡などを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトiPS細胞の導入が当初より遅れたため、心筋スフェロイドにおける機能解析(多種細胞配合比率やそれぞれの拍動率など)がまだ不十分である。現在、ヒトiPS細胞の心筋への分化系統確立を試みているところである。また、市販されているヒトiPS細胞由来の心筋細胞そのものの収縮力、凝集力(スフェロイド形成能力)などが、マウスES細胞などと比べても、格段に劣ることも、グラフト作製まで至っていない理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
まずヒトiPS細胞の心筋細胞への分化を確立したい。分化効率が悪いようであれば、培地・フィーダー細胞・試薬・乖離液などの変更なども行いながら、改善していきたい。将来的なグラフト作製には少なくとも1枚あたり2-4×107もの細胞数が必要となるため、大量培養のシステムも構築しなければならない。 同時に、至適細胞配合比率、培養期間などを検討した上で、より機能的な拍動心筋グラフトの構築を行う。さらに、機能性や移植時のハンドリング性の強化・細胞残存率上昇のために、培養液を効率よく循環させるバイオリアクターなどの開発なども行う必要がある。 グラフト作製後は、小動物から大動物に至るまでの動物移植実験を行い、その生存曲線や心臓の壁運動の変化、血液学的検査、組織学的評価などを行う。急性期の成績を確認してから、より長期の心機能改善効果なども示していければ、と考えている。
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