研究課題
本研究では、大動脈解離は大動脈に機械的ストレスおよび液性因子によるストレスが加わった際の応答機構の破綻であるとの仮説を検証している。具体的には、ストレスセンサー分子としてMRTF-Aの機能を中心に解析を進めている。MRTF-Aは種々のストレスを感知して細胞核内に移行し、遺伝子発現を制御することでストレス応答を制御する転写制御因子である。初年度にはアンジオテンシンIIを持続投与によるストレスで大動脈解離を発症するモデルを確立し、発症までの時間経過を詳細に解析した。その結果、アンジオテンシンII投与3日目で大動脈内膜の破綻と中膜の血腫を認め、7日目には中膜破綻の拡大、14日目までに大動脈破裂を含む重症解離を発症することを明らかにした。このモデルの時間経過でMRTF-Aの発現、核内移行、MRTF-Aの標的遺伝子の発現を検討したところ、アンジオテンシンII投与1日目から3日目にかけてMRTF-Aの核内局在が亢進し、これと並行してMRTF-A標的遺伝子であるCCN1、CCN2、TNCの発現が亢進することを見出した。これらの標的遺伝子の発現はMRTF-A阻害薬CCG-203971で抑制された。大動脈解離におけるMRTF-Aの役割を検討するために、MRTF-Aノックアウトマウスと野生型マウスを比較した。MRTF-Aノックアウトマウスでは内膜の破綻、中膜の血腫形成ともに野生型マウスより有意に少なく、MRTF-Aが解離促進的に働くことが示された。MRTF-Aノックアウトの発生学的な関与を除外するために、野生型マウスにおいてCCG-203971の効果を検討した。アンジオテンシンII投与前日からCCG-203971投与を開始したところ、大動脈解離の発症は有意に抑制された。以上の知見から、MRTF-AはアンジオテンシンIIによるストレス応答に直接関与し解離促進的に働くことが示された。
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