研究課題
我々が開発中のバイオバルブ人工弁組織体は、動物体内をリアクターとして、高分子製鋳型を皮下に1~2 ヶ月埋入することで自動的に形成される自己組織体である。これまでビーグル犬で作製されたバイオバルブは、3ヶ月間の観察期間内において肺動脈弁として良好な稼働性を維持することを報告している。前年度に高分子製鋳型に金属ステントを組み込んだものを大動物(ヤギ)の皮下に埋入した後取り出し、1-2ヶ月でバイオバルブステントを作成することが可能であることを明らかにした。また、ステントバルブの耐圧性および流量性能をモック回路による模擬循環装置に装着し、in vitro で評価して、生体の弁と同等以上の性能を有することを示した。今年度は、作製したステントバルブを用いて経カテーテル的弁挿入術により、大動物に移植可能か評価した。成ヤギ6例に経カテーテル的大動脈および肺動脈移植法(TAVI or TPVI)(Apical approach)により、成ヤギの大動脈(3例)または肺動脈(3例)に移植した。移植手術では、バイオバルブステントの位置合わせに時間と技術を要したが、6例全例ともカテーテルにより移植が可能であった。しかし、TAVIの2例とTPVIの1例は、自己弁とバイオバルブステントの弁輪径のミスマッチによりステントが移動し、術当日に死亡した。その後慢性実験に移行し、動脈圧または肺動脈圧の負荷がかかる状態でバイオバルブの性能を1-6ヶ月間継続的に評価した。TAVIの残り1例は術後32日間問題なく経過したが、ステントが原因と思われる僧帽弁腱索一部断裂により死亡した。TPVIの残り2例は術後問題なく経過し、1例は6ヶ月を超えた190日目で計画的に実験を終了した。残り1例も術後160日を経過して順調である。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は、作製したステントバルブを用いて経カテーテル的弁挿入術により、大動物に移植可能か評価する急性実験を行うことを目標にしていたが、何例かはそのまま慢性実験に移行することが可能で、ステントバルブの耐久性や抗血栓性の持続的な評価を観察するところまで進展して行い得た。
当年度と同じく、ステントバルブを用いて経カテーテル的弁挿入術により、大動物に移植可能か評価する実験の例数を増やして、同デバイスの実現可能性を見ると共に、慢性実験に移行した例で、より長期の性能を評価する。
当初、今年度に成果発表のための学会参加旅費を計上していたが、慢性実験に移行する例等が生じたため、本年度は実験のデータ採取に重点を置き、次年度以降に集中して成果発表をすることに変更し、そのための旅費を次年度に繰り越すこととした。
2016年度に開催される国際学会にて積極的に成果発表を行うための旅費に充足する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 8件)
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