われわれが開発中のバイオバルブ人工組織体は、動物体内をリアクターとして、高分子製鋳型を皮下に1~2 ヶ月埋入することで自動的に形成される自己組織体である。今年度は昨年度に引き続いてバイオバルブステントを用いた経カテーテル的挿入術により、大動物に移植可能か評価した。 成ヤギ3例に、麻酔下、手術的にバイオバルブ作製用鋳型に金属ステントを組み込んだもの複数個皮下に埋入した。約2ヶ月後に周囲に形成された皮下組織体を鋳型と共に取り出し、鋳型のみ削除しバイオバルブステントを得た。これを用いて経カテーテル的大動脈および肺動脈移植法(TAVI or TPVI)(Apical approach)により、成ヤギの大動脈(1例)または肺動脈(2例)に移植した。その後慢性実験に移行し、動脈圧または肺動脈圧の負荷がかかる状態でバイオバルブの性能を継続的に評価した。 移植手術では、バイオバルブステントの位置合わせに時間と技術を要したが、3例全例ともカテーテルにより移植が可能であった。しかし、TAVIの1例は、自己弁とバイオバルブステントの弁輪径のミスマッチによりステントが移動し、術当日に死亡した。TPVIの残り2例は術後問題なく経過し、1例は70日目で計画的に実験を終了した。残り1例も術後40日を経過して順調である。また、昨年より継続中であったTPVIの残り1例は1年7ヶ月問題なく経過し終了した。このことからも、バイオバルブステントは心臓代用弁として良好な性能を持つことが示された。以上より、自己組織由来心臓弁(バイオバルブ)とステントを組み合わせて開発したバイオバルブステントは、低侵襲的な経カテーテル的挿入法で留置可能であることが示された。
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