研究課題
心筋梗塞へのゲル注入療法の可能性の検証を進めた。ゲル材料が梗塞部位リモデリング抑制に及ぼす影響は未だ解明されておらず、その効果の真偽さえも、また、如何なるゲルが最適かなども全く不明である。われわれは、ポリ乳酸とポリエチレングリコールから構成される,インジェクタブルゲル(体温に応答してゲル化する)を世界に先駆けて報告した。本材料を駆使して、そのゲル化挙動、炎症誘発性の強弱など、広範な性質のゲルを作成することでラットおよび少数例のブタ心筋梗塞モデルへのゲル注入量用法の効果を検証し、さらに、ゲル材料の強度の影響について検討した。従来のアルギン酸ゲルの心筋内注入では、濃度や注入量をパラメーターとして検討が進んだがその解明には至っていない。今回使用したポリ乳酸―ポリエチレングリコールインジェクタブルハイドロゲルは、ステレオ結晶形成がメカニズムであるために、温度応答的に不可逆的にゲル化し、さらに生体吸収性であることから、長期間の炎症の影響を排除できた。共重合体の組成と分子量を制御することでゲル化時間やゲル強度を適当な範囲で制御できた。ラット心筋梗塞モデルに、これらのゲルを注入したところ、4週間後にはすでにゲルは吸収されるにもかかわらず、心拍出量など心機能の低下に対しては抑制的に働くことが示された。この効果は、アルギン酸ゲルと同程度であった。一報、その炎症惹起性を比較すると、その炎症性は優位に抑制され、生体吸収性と関係していると考えられる。一方、ゲル強度と心機能改善との相関を明らかにするには至っておらず、今回作製した10kPaよりもさらに高強度のゲル化材料で検討する必要があると思われた。分解性のゲルで初期心筋サポートするのみで、リモデリングを抑制し、心機能改善につながることは有用な知見である。
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