研究課題/領域番号 |
26670630
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 准教授 (90452333)
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研究分担者 |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 臓器保存 / 高圧 / 非凍結 / クラウン系ミニブタ / 肺移植 / 前臨床研究 / 虚血再灌流障害 |
研究実績の概要 |
現在の冷却浸漬保存法では、臓器摘出から移植後血流再開までの臨床的な虚血許容時間は肺では8時間と短く、提供臓器を移植に用いる機会を失うこと、急性・慢性臓器不全発生の危険性を高める等の問題を伴う。臓器保存時間の延長はこれらの問題解決に大きく寄与し、より安全かつ高品質の移植医療に直結することが期待される。そこで本研究では、高圧付加により、非凍結状態のまま液体を超低温に保つことが可能である現象を応用し、高圧下・非凍結状態での長期臓器低温保存方法の確立を目指す研究として、ミニブタ肺移植モデルを用いた前臨床実験によって、各種圧力条件、温度条件、臓器保存時間に設定した臓器移植を行い、各種保存条件下での臓器の機能評価をはかる。 平成26年度は、目的1に掲げる【高圧による肺損傷が生じない圧力レベルを明らかにする】実験に着手した。60MPaを一過性に肺に付加した際は、組織学的に肺実質は正常に保持されていたため、まず60MPa負荷後の肺をMHC適合のミニブタに同所性左肺移植を行った。その結果、移植肺再灌流60分後に移植肺から泡沫状痰の排出が生じ、組織所見では肺胞内出血や浮腫などの虚血再灌流障害を認めた。この実験では、肺に含気を保持したままで圧力を付加していたが、圧力による気体の体積変化は大きく、これが肺損傷の誘因となった可能性がある。今後、含気を保持した肺と虚脱させた肺の耐圧能を比較する実験を行う必要性が示唆された。 上記実験に加え、平成27年度に予定する【高圧下非凍結状態で長期間の超低温保存を行った臓器は移植後に正常に機能するか?(目的2)】の対照実験として、クラウンミニブタ肺移植モデルでの肺保存時間の限界を評価する実験に着手した。この結果、24時間、18時間保存肺を用いた移植ではいずれも重度虚血再灌流障害を呈したことから、引き続き保存時間の限界を明らかにする実験の必要性を認識する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究によって、目的1に示す耐圧能の解明(肺損傷を生じない圧力レベルの解明)という点からは明確な結論を得ることができていない。しかし、肺を通常のように含気を保持した状態で保存するか、あるいは虚脱させた状態で保存するかによって、高圧保存の際には移植後の虚血菜館るう障害の程度が異なる可能性を示す結果が得られていることから、継続実験により課題の達成は近いと考える。 更に平成26年度には、平成27年度実施予定の実験を先駆けて行っていることから(高圧保存に対する対照実験として、クラウンミニブタ肺移植モデルにおける冷却浸漬保存時間の限界を評価する実験)、総合的には研究課題はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、目的1に掲げる【高圧による肺損傷が生じない圧力レベルを明らかにする】実験として、60MPa負荷後の肺(肺は含気した状態で維持)を、MHCが適合した他のミニブタに対し同所性左肺移植を行ったところ虚血再灌流障害所見を認めたということから、圧力による気体の体積変化は大きいことを鑑みると、含気を保持した肺と虚脱させた肺との違いにより圧力による肺損傷の程度が異なる可能性が示唆される結果を得ている。そこで平成27年度は、肺の含気の有無により耐圧能が異なるかについて、平成26年度と同様にMHC適合間クラウン系ミニブタ肺移植モデルを用いて評価を進める。 並行して、【高圧下非凍結状態で長期間の超低温保存を行った臓器は移植後に正常に機能するか?(目的2)】を推進するため、通常の冷却浸漬保存におけるクラウン系ミニブタ肺の保存時間の限界を明らかにする実験を進める(まずは12時間保存の限界を評価)。この結果と、目的1に掲げる肺の耐圧能評価の結果を総合し、高圧保存によってどれだけの臓器保存時間延長効果が見込まれるかについて、検討を行う。
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