研究課題
本研究では、腫瘍血管新生が著明である血管芽腫の網羅的ゲノム解析を通して、血管芽腫の原因遺伝子同定、腫瘍血管新生抑制による新規癌治療構築を目標としてきた。そこで、当科で収集した全32例の血管芽腫の、腫瘍DNAを用いて、direct sequencing、MLPA、Ion Torrentによるtarget sequencing、bisulfite sequencingなどを行ってきた。その解析結果をまとめたものは、2016年のアメリカ脳腫瘍学会で学会発表を行い、さらに、Neuro-oncology誌(2017)に掲載することができた。平成28年度では、上記の32例に加えて、当科のVHL病外来患者や、新たな血管芽腫摘出術施行症例に対して、更なる正常血液検体や、腫瘍検体の収集、そして、遺伝子解析を行った。VHL病が疑われる患者においては、遺伝カウンセリング施行後、本人の承諾を得て、VHL病の遺伝子診断を行った。これまでの我々の検討により、VHL病患者の血管芽腫検体でも、孤発性の検体であっても、VHLの2hitによる不活化が多い事が判明した。また、VHL病の好発腫瘍である腎癌においては、VHLだけでなく、PBRM1やBAP1などの遺伝子異常が多い事が知られているが、当科の血管芽腫検体において、これらの遺伝子に対するtarget sequenceを行ったが、有意な遺伝子異常を伴う遺伝子は判明しなかった。さらに、本研究の連携先である京都大学中村研究室では、VHL病特異的iPS細胞に対して、VHLの2hitによる不活化を導入して、血管芽腫細胞株の樹立が進行中である。以上より、血管芽腫腫瘍化には、VHL不活化が、改めて重要である事が判明した。従って、VHLが関与するシグナル回路異常の解明と、その修正を行う事が、腫瘍血管新生抑制による新規癌治療構築につながる可能性があると考えられた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
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