本研究課題では、将来的に悪性グリオーマの治療に応用することを目指して、膜結合型プロテアーゼであるADAM10の機能を阻害するペプチドを開発することを試みる。ADAM10が細胞膜に局在してその機能を発揮するためには、テトラスパニンC8 (TspanC8) サブファミリー蛋白質と結合することが必要であることから、ADAM10とTspanC8との結合を阻害するペプチドを同定し、そのペプチドがADAM10の機能を阻害しうるかを検証する。本年度は、まず昨年度に引き続いて、ADAM10のどのdomainが TspanC8 に属するTspan14に結合できるかを強制発現系を用いて検討した。その結果、ADAM10の主にmetalloprotease domain、disintegrin domain、およびcysteine-rich domain がTspan14と結合できることが確認できた。この結果は、ADAM10が基質の切断を行うために、その活性部位であるmetalloprotease domainが細胞膜直上に位置できるように、ADAM10はTspan14と複数箇所で結合して折れ曲がるように存在していることを示唆した。さらに、グリオーマ細胞株U251MG細胞を用いた系で、細胞培養液にADAM10のmetalloprotease domain、disintegrin domain、およびcysteine-rich domainとGSTとの融合蛋白質を各々加えると、ADAM10の活性を部分的に抑制できる可能性を見出した。
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