椎間板組織の中核を成す椎間板細胞は、非増殖細胞である心筋細胞に似ており、終末分化した状態に近くその細胞増殖能は低い。また角膜組織と同様に、中心部は無血管野で周囲からの拡散により栄養状態を維持しているといった特殊な組織でもあり、その細胞増殖・維持機構は不明である。申請者らはまず、栄養飢餓により惹起される椎間板細胞の変性変化に関与する遺伝子群をマイクロアレイにより網羅的に探索した。その結果、細胞周期関連遺伝子のDNA damage checkpointに属する遺伝子群に有意な変動がみられ、今後のさらなる病態解析の標的となり得ることが示唆された(Sudo et al. PLoS ONE 2013)。本研究ではさらに、これら細胞周期関連遺伝子群の椎間板変性における機能解析を進め、椎間板細胞の増殖が分子レベルで正負両方にコントロール可能かどうか、その細胞増殖・細胞周期制御機構を明らかにしようとしている。当該年度は細胞周期関連遺伝子としてP27に着目し,P27ノックアウトマウスの作製を試みた.その結果genotypingを経てP27ノックアウトマウスの作製に成功した.また再現性の高いin vivo椎間板変性モデルの作製が不可欠であると考え、以下によりマウス椎間板穿刺変性モデルを確立することを試みた。 ・11週齢C57BL/6マウスを用いて、33あるいは35ゲージ(G)針を使用し、第4/5 腰椎(L4/5)椎間板を側面から穿刺貫通させ、μCT MPR画像により貫通部位を3次元的に確認する。 ・貫通部位は、椎間板中央軸位における椎間板短径を3分割し、中心領域と外側領域を同心楕円状に分け、さらに外側領域は腹側・背側領域に2分割して確認を行う。 ・術後2、4、8、12週時にL4/5(穿刺群)およびL3/4椎間板(非穿刺群)を7T-MRIにより撮影後、病理組織切片を作成し椎間板変性変化を病理組織学的にも評価する。 その結果,再現性のあるマウス椎間板穿刺変性モデルを確立した。
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