本年度に実施した研究成果については下記の通りである。 1.中胚葉誘導過程の解析:平成26年度に引き続き、中胚葉誘導過程の解析を行った。昨年、中胚葉を特異的に分離することが可能な表面抗原の、小規模スクリーニングを行った結果、これまでまったく使用されてこなかった中胚葉特異的な表面抗原を得ることができた。昨年までに、この手法を用いて単離した中胚葉細胞が、骨・軟骨・脂肪・筋肉といった中胚葉に由来する細胞へ分化する能力があることを予備的な結果として示していた。本年度は網羅的遺伝子解析によるシグナル伝達経路の解析を行う予定であったが、その前にこの細胞が本当に中胚葉細胞としての特徴を持つかどうかを検討するため、さらに真皮節および靭帯節への分化誘導を試みた。結果として、真皮節およぼ靭帯節のマーカーをqPCRにより検出することができる誘導条件を見いだすことに成功した。このことにより、得られた細胞は確かに中胚葉細胞としての特徴を持っていることがわかった。しかし同時に、抗体染色による誘導効率検討の結果、得られた細胞の各細胞系譜陽性率は低く、さらなる条件検討が必要と考えられた。 2.中胚葉細胞や体軸中胚葉細胞の維持培養条件の検討:多能性幹細胞から誘導した中胚葉細胞を、細胞の特性を保ったまま維持培養できる培養条件を探索した。培養条件としてはin vivoの尾芽におけるシグナル分子の発現パターンを参考とし、培地にFGFシグナルおよびWNTシグナル関連分子を添加したが、残念ながらどの培養条件でも均質な細胞集団にはならず、複数種類の細胞が混じったものとなった。この結果を踏まえ、候補分子による小規模スクリーニングから中~大規模スクリーニングへと進む計画を別資金の研究として申請した。
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