研究課題/領域番号 |
26670667
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
疋田 温彦 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60443397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨リモデリング / 骨モデリング / イメージング |
研究実績の概要 |
骨の恒常性を制御している破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞の細胞間相互作用を解明するために、これらの細胞と骨基質から形成される生体内の骨代謝細胞ネットワークをin vitroにおいて再構築し、2光子励起顕微鏡や第2次高調波発生といった非線形光学技術を駆使した解析が可能な系の確立を試みた。 マウスより採取した骨芽細胞分化培養系において、3週間の長期培養により基質中に出現する細胞が骨芽細胞であることを、骨細胞マーカーに対する免疫染色や、骨細胞を蛍光標識可能であるDMP1-Cre/flox-tdTomato由来の細胞を用いた培養を行うことで確認した。この系において、同一部位を経時的に2光子励起顕微鏡で観察し、基質の増加、骨細胞の出現とともに骨基質上の骨芽細胞の形態が立方形から扁平状へと変化することを定量的に証明した。 さらに、骨芽細胞長期培養4週の時点で、破骨細胞を特異的に蛍光標識可能であるCatKp-Cre/flox-tdTomatoマウス由来の骨髄マクロファージと共存培養し、さらに3週後に骨芽細胞分化培地に戻したところ、基質吸収部において骨芽細胞が扁平状から立方形へと変化し、その後新しく合成された基質によって吸収窩が再充填される様子を捉えることができた。すなわち、骨リモデリングサイクルにおける破骨細胞と骨芽細胞のカップリング現象を細胞レベルでとらえることに成功した。カップリングの生じる頻度、カップリングにより十分な基質再充填が生じる頻度について定量化を行い、先行文献におけるin vivoの解析と同等の結果を得た。また、基質吸収部の再充填を、基質体積を解析することで定量的に表すことが出来た。 さらに、骨芽細胞が自ら産生した基質に埋まっていく様子も観察できた。 得られた結果については論文として投稿、受理され、既に公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、平成26年度は骨芽細胞から骨細胞への分化の経時的観察、および破骨細胞分化とその支持細胞の検討を行う予定であった。前者については、骨芽細胞分化培養系において同一部位を経時的に観察し、基質の増大と共に、基質内の骨細胞の増加を認めている。これに加え、骨細胞分化に伴って生じる現象と考えられる、骨芽細胞の形態変化を定量化することにも成功している。後者については、より早期から破骨細胞を観察する必要が認められたため、破骨細胞前駆細胞に発現する分子RANKのプロモーター活性によりCreリコンビナーゼを発現するマウスを入手する手続きを行っている。 また、平成27年度に破骨細胞による骨吸収後の骨芽細胞recruitmentの検討を行う予定であったが、既に平成26年度中に、長期培養骨芽細胞と骨髄マクロファージ共存培養系における同一部位の経時的観察により、骨吸収窩に骨芽細胞が動員されることを確認している。これに加え、さらに吸収部の基質の再充填までが観察され、これまで観察することができなかった基質の吸収から再充填までの骨リモデリングの全過程をin vitroにて再現し、観察することに成功している。得られた結果については論文投稿を行い、既にインターネット上で公開されている。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞をより早い分化段階から蛍光標識するために、RANKのプロモーター活性によりCreリコンビナーゼを発現するマウスを導入して、LoxP 配列に挟まれたStop 配列の下流に赤色蛍光蛋白質tdTomato の配列を持つマウスとかけ合わせることにより、破骨細胞前駆細胞を蛍光標識し、破骨細胞形成過程をより早期から観察する。この過程において隣接する骨芽細胞の有無やその形態に注目した観察を行う。 また、骨芽細胞のrecruitment への関与が報告されている分子の阻害を行うことにより、その影響を定量化する。阻害剤としては、ephrinB2-EphB4 系を阻害する可溶型EphB4、TGF-βの受容体に対する阻害剤であるSB431542、semaphorin 4D (Sema4D)-Plexin-B1 系 を阻害する可溶型Sema4Dなどといった薬剤の基質再充填率への影響を検討する。 さらに、投与法により骨量への影響が異なるPTHの影響を、確立した系において連続あるいは間歇投与し、各細胞の動態や基質の再充填への影響を検討する。 これらに加えて、カップリング阻害因子のスクリーニング系構築のために、確立したin vitro系において、リモデリング過程ををより簡便に検討可能な方法について検討を行う。具体的には、吸収窩を特異的に染色可能な方法、新生基質を特異的に染色可能な方法などについて検討する。
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