骨の恒常性を制御している破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞の細胞間相互作用を解明するために、これらの細胞と骨基質から形成される生体内の骨代謝細胞ネットワークをin vitroにおいて再構築し、2光子励起顕微鏡や第2次高調波発生といった非線形光学技術を駆使した解析が可能な系の確立を試みた。 マウスより採取した骨芽細胞分化培養系において、3週間の長期培養により基質中に骨細胞が出現することを確認した。この系において、同一部位を経時的に2光子励起顕微鏡で観察し、基質の増加、骨細胞の出現とともに骨基質上の骨芽細胞の形態が立方形から扁平状へと変化することを定量的に証明した。 さらに、骨芽細胞長期培養4週の時点で、破骨細胞を特異的に蛍光標識可能であるCatKp-Cre/flox-tdTomatoマウス由来の骨髄マクロファージと共存培養し、さらに3週後に骨芽細胞分化培地に戻したところ、骨リモデリングサイクルにおける破骨細胞と骨芽細胞のカップリング現象を細胞レベルでとらえることに成功した。カップリングの生じる頻度、カップリングにより十分な基質再充填が生じる頻度について定量化を行い、選考文献におけるin vivoの解析と同等の結果を得た。また、基質吸収部の再充填を、基質体積を解析することで定量的に表すことが出来た。 さらに、骨芽細胞が自ら産生した基質に埋まっていく様子も観察できた。 得られた結果については論文投稿を行い、既にインターネット上で公開されている。 最終年度にはさらに、破骨細胞が出現する部位と骨芽細胞形態との関連や、培養期間をさらに延長した際の、休止していた破骨細胞前駆細胞の分化によると思われる破骨細胞形成、基質吸収および吸収窩の再充填についての解析を行った。
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