研究課題/領域番号 |
26670669
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
大田 智美 宮崎大学, 医学部, 医員 (80644096)
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研究分担者 |
帖佐 悦男 宮崎大学, 医学部, 教授 (00236837)
関本 朝久 宮崎大学, 医学部, 講師 (60305000)
荒木 正健 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (80271609)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ES細胞 / 骨特異的プロモーター / トランスジーン / 骨分化特異的培養 / 骨再生 |
研究実績の概要 |
整形外科領域における骨折などの観血的治療の際に、骨粗鬆症などによる高度骨欠損に対して大量の骨移植を必要とする場面を臨床現場では数多く経験するが、現在でも人工骨や同種骨移植にたよらざるを得ないのが現状で、十分な自家移植骨を得ることは困難である。これまでの骨再生研究においては骨髄間葉系細胞を用いた多数の骨分化誘導の報告があるが(Yu-Shik.H, 2007, Mahmood A, 2011)、その量や分化効率、増殖能は限られており、いまだ臨床治療に十分なレベルに達していない。一方でES細胞の持つ高い自己複製能と旺盛な増殖能は、組織再生の面で非常に大きな利点であると言える。これまで移植医療には、拒絶反応、感染、倫理的問題があったが、2006年のiPS細胞の登場でこれらの問題が一挙に解決できるようになり、今後骨再生においても、ES細胞の効率的かつ安全な分化増殖制御法の確率は極めて重要と考える。 現在、マウスES細胞を効率的に骨組織へ分化させるプロトコールを標準化している。本研究は、骨組織に特異的に発現するポロモーターにレポーター遺伝子を接続したトランスジーンを作製し、そのトランスジーンをエレクトロポレーション法でマウスES細胞に導入して、骨専用培地で特異的かつ効率的にES細胞を骨組織へ分化誘導させることを目的としている。現時点で4種類のトランスジーンの制限酵素地図は完成しており現在構築中である。今後これらのトランスジーンを完成させ、ES細胞に導入し、それぞれのES細胞を培養しながら骨分化増殖能を評価する。本研究の最終的な目標は、テーラーメイド医療として、骨をin vitroで形成し骨再生医療に応用できる基盤を作製することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、骨組織に特異的に発現するプロモーターにレポーター遺伝子を接続したトランスジーンをCollagen I (Rossert J, 1995)、Osteocalcin (Kesterson RA, 1993)、Runx2 (Xiao ZS, 2001)、Osterix (Lu X, 2006) プロモーターを用い4種類構築中である。トランスジーン作製において、最終段階の Runx2 promoter-AcGFP1-pBl と pU-16 のligation がうまくいかずに色々と条件を変えて実験を続けた。competent cell を XL1-Blue から、STBL2 に変更した結果、ようやく ligation 可能となった。これでトランスジーン:Runx2 promoter - AcGFP1 - IRES - βgeo - polyA が完成し、今後は、このトランスジーン:Runx2 promoter - AcGFP1 - IRES - βgeo - polyA をES細胞に導入し、骨分化特異的培養を行い、コントロールと比較することで、ES細胞にトランスジーンを導入した場合の骨形成能状態を評価検討する予定である。 標準化していたマウスES細胞を効率的に骨組織へ分化させるプロトコールについては均一な胚様体(EB)形成の為にMPCポリマーコートディッシュを用いる(96well法1000個/200μl)。EB 3日目より5日目まで3日間レチノイン酸0.1μMを付加。5日目より0.1%ゼラチンコートDishにてアスコルビン酸50μg/ml, 10mM βグリセロリン酸(2日に1回培地交換)、10日目からデキサメサゾン0.1µMを第21日目まで付加しALP染色、Alizarin染色にて骨芽細胞の特異的分化を示すことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き来年度も、その他のトランスジーンを完成させる予定である。トランスジーン に用いる骨組織特異的プロモーターとして、Collagen I (Rossert J, 1995)、Osteocalcin (Kesterson RA, 1993)、Osterix (Lu X, 2006) プロモーターを用いる計画である。また完成したトランスジーンをエレクトロポレーション法によりマウスES細胞に導入し、ネオマイシン耐性コロニーを単離する。単離されたクローンをネオマイシン存在下で骨分化増殖特異的培地を用いて培養を行い、骨分化増殖能を評価する。ネオマイシンを効かせる時期はいろいろ検討が必要と考える。骨分化特異的培地にはレチノイン酸、アスコルビン酸、β-グリセロリン酸、デキサメタゾンを添加する(Jaiswal N, 1997, Phillips BW, 2001)。そして未分化な状態、および浮遊培養し胚様体から骨へ分化していく過程を経時的にX-gal染色し、どの時点でどこが染色されるか観察する。同時に蛍光にてもチェックする。 このように随時、β-geo、蛍光タンパクの発現パターンをモニターし、さらに骨特異的分化をHEおよび骨特異的染色 (アリザリンレッ ド染色、ALP染色など)、免疫染色、In situ hybridization、X-gal染色などにて評価する。骨分化特異的培養においては今後も様々な培養条件を検討する必要があると考える。本研究で得られた成果については、学会、論文などで発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用する見込みがあるため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に関連した学会への参加費、物品の購入費などに使用する見込みである。
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