硫化水素はミトコンドリア呼吸鎖のシトクロムcオキシダーゼを阻害する致死性猛毒ガスとして有名であるが、近年、生体内において産生される内在性の情報伝達物質としての機能が発見され、その生理活性と作用メカニズムに対する関心が高まりつつある。しかしながら、個体レベルにおける硫化水素機能やその作用メカニズムについては未だ未解明な点が多く、特に骨代謝における役割に関してはよく分かっていない。 今年度は主要な硫化水素産生酵素であるCBS(シスタチオニンβ合成酵素)の全身性ノックアウトマウスの骨組織解析を進めた。その結果、CBS欠損マウスにおいて骨組織異常が起こる原因を突き止めることに成功し、現在はその詳細な分子メカニズムについて解析を進めているところである。 また、CBSノックアウトマウスで観察された骨組織異常が血中ホモシスチン濃度の上昇と関連があるかどうかを明らかにし、更には、異常の原因となる細胞種の特定を行なうべく、Cre/loxPシステムを用いた細胞種特異的CBS遺伝子ノックアウトマウスの樹立を進めている。以前作製したfloxed CBSマウス作出用のターゲティングベクターでは非特異的な組換えが多く見られたため、再度ベクターの構築を行い、ES細胞への遺伝子導入を行なった。その結果、複数の相同組換え体ESクローンの取得に成功した。今後、キメラマウスの作出を行ない、floxed CBSマウスの樹立を行なう予定である。
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