研究課題/領域番号 |
26670678
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小幡 英章 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20302482)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内因性鎮痛系 / 下行性抑制系 / ノルアドレナリン / セロトニン / 神経障害性疼痛 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は動物実験で内因性鎮痛系における下行性抑制系の役割を解明すること、並びにプレガバリンがヒトの内因性鎮痛系を強化するのかを明らかにすることである。目的1と2に分かれており、並行して研究を進めているのでそれぞれの進捗状況を報告する。 目的1(内因性鎮痛系の可塑性における下行性抑制系の役割を動物モデルで検討する)では次のような結果を得た。ラットのAscending nociceptive control(ANC)法を用いて内因性鎮痛系の定量化を行った。ANC法ではラットの前肢にカプサイシン(250 μg)を投与すると内因性鎮痛系が活性化するため、後肢に鎮痛作用が認められるようになるが、この現象をNoxious stimulation induced analgesia (NSIA)と呼ぶ。後肢の鎮痛作用はPaw-pressure testを用いて、機械的侵害刺激への逃避閾値を計測することによって定量化した。正常動物ではNSIAが観察されるが、神経障害性疼痛モデルであるSpinal nerve ligation(SNL)を作成して、神経損傷からの時間経過とNSIAの関連を観察すると、4週間ではNSIAが弱くなり、5週間ではNSIAがほとんど観察されなくなる。現在は腰部脊髄後角からのマイクロダイアリシスによって、モノアミン(ノルアドレナリン・セロトニン)の変動を観察中である 目的2(プレガバリンの内因性鎮痛系への作用を健康なボランティアで検討する)は臨床研究である。群馬大学臨床試験審査委員会の承認を得て(群馬大学臨床試験審査委員会: No. 1009)研究を行っている。申請書に記した方法によってヒトの内因性鎮痛(CPMテストによって判定)に対するプレガバリン(150 ㎎)の効果をプラセボ群と比較した。これまでにデータ解析に必要な最低限の症例数の実験は終了しており、今後はデータを詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的1(内因性鎮痛系の可塑性における下行性抑制系の役割を動物モデルで検討する)では動物を用いた実験を行っているが、行動薬理学的検討は大部分終了しており、現在はマイクロダイアリシスによる脊髄モノアミンの変動と、内因性鎮痛系の関連を観察中である。マイクロダイアリシスの研究は研究期間の後半に行う予定であったので、進捗は当初の計画よりかなり早い。 目的2(プレガバリンの内因性鎮痛系への作用を健康なボランティアで検討する)は臨床研究である。こちらはプレガバリン投与群とプラセボ投与群で内因性鎮痛の変化を比較する研究である。ボランティアの参加者が予想以上に順調に集まったため、当初の予定していた最少症例数(各群21)以上のデータはすでに得ているため、こちらも当初の計画よりも進捗は早い。
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今後の研究の推進方策 |
目的1ではSNL作成後の時間経過と、脊髄後角からのマイクロダイアリシスによる脊髄モノアミン(ノルアドレナリン・セロトニン)の変動についての関連を、ラットの内因性鎮痛系モデル(ANC法)を用いて検討する。どのようなデータが得られるかにもよるが、その後は選択的な拮抗薬を使用した行動実験を行う予定である。 目的2ではこれまでに得られたデータ解析を行い、さらなる研究が必要であるか否かを含めて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は特に動物実験において、行動実験が主体であったため、動物の購入費用の他に購入するものが少なく、高価な薬剤や維持費用がほとんどなかったため、支出が少なくて済んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は選択性の高い拮抗薬を使用した行動実験や、脊髄後角でのマイクロダイアライシスなどを行う。薬剤の購入やマイクロダイアライシスシステムの維持には相当の費用が必要となる。
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