研究課題
目的1と2に分かれており、並行して研究を進めているのでそれぞれの進捗状況を報告する。目的1(内因性鎮痛系の可塑性における下行性抑制系の役割を動物モデルで検討する)では次のような結果を得た。ラットのNoxious stimulation induced analgesia (NSIA)法を用いて内因性鎮痛系の定量化を行った。ラットの前肢にカプサイシン(250 μg)を投与すると、後肢に鎮痛作用が認められるようになるが、この現象がNSIAである。正常動物ではNSIAが観察されるが、神経障害性疼痛モデルであるSpinal nerve ligation(SNL)を用いて、神経損傷からの時間経過とNSIAを観察すると、4週間ではNSIAが弱くなり、5週間ではNSIAがほとんど観察されなくなる。腰部脊髄後角からのマイクロダイアリシスによってモノアミンの変動を観察すると、カプサイシン投与後にはノルアドレナリンだけが増加するが、セロトニンやドーパミンは増加しなかった。SNL作成から5週間経過したラットに三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン、またはプレガバリン(それぞれ10 mg/kg/day)を5日間腹腔内投与すると、どちらの薬剤も神経結紮による痛覚過敏を抑制したが、NSIAはアミトリプチリンによってのみ回復したが、プレガバリンにはそのような作用はなかった。この結果は論文化しAnesthsia and Analgesia誌に受理された。目的2(プレガバリンの内因性鎮痛系への作用を健康なボランティアで検討する)は臨床研究である。群馬大学臨床試験審査委員会の承認を得て(群馬大学臨床試験審査委員会: No. 1009)研究行った。申請書に記した方法によってヒトの内因性鎮痛(CPMテストによって判定)に対するプレガバリン(150㎎)の効果をプラセボ群と比較した。全ての実験は終了している。プレガバリンは内因性鎮痛そのものは増強しないが、元々内因性鎮痛が低い被験者では増強させることが明らかになった。現在は論文を作成中である。
1: 当初の計画以上に進展している
目的1(内因性鎮痛系の可塑性における下行性抑制系の役割を動物モデルで検討する)では動物を用いた実験を行っている。研究結果はほぼ仮説の通りであったため、当初予定していた目的はほぼ果たして論文を作成した。目的2(プレガバリンの内因性鎮痛系への作用を健康なボランティアで検討する)は臨床研究である。ボランティアの参加者が予想以上に順調に集まったため、当初の計画よりも進捗は早い。
目的1の研究は当初の計画は達成し、論文はAnesthsia and Analgesia誌に受理された。今後はデュロキセチンのような神経障害性疼痛に使用される薬物も、アミトリプチリンと同じように、慢性痛存在下で減弱したNSIAを回復させる作用があるのか否かについて検討を進める。目的2では実験と解析は終了しているため、今後は論文作成を行う。さらなる詳細な解析が必要になる可能性がある。
目的1の動物実験が当初の研究目的を果たして一段落したために支出が少なくなった。
今後は他の抗うつ薬に関してもアミトリプチリンと同様の作用があるのか否か、ラットNSIAモデルを用いて検討を進めるため、次年度使用額はすべて実験に使用する予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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