本研究は、侵襲が小さく日常的な生体バイタルサインモニタで得られる、心電図、動脈圧波形および心音図から、平均血圧、最低血圧、等容量収縮時間、駆出時間を求め、これらをパラメータとして左心室動脈結合状態(Ees/Ea)を計算し、左心室のアンストレストボリューム(Vo)がゼロであるという前提で、左心室拡張終期容量(Ved)を計算するものである。 既に動物実験にて収縮末期血圧(Pes)を使用する近似式が定められていた。本研究にて、これを平均血圧(Pm)で代用する方法を確立したが、連続測定において、若干の補正の必要性が明らかとなった。並行して、動物実験によるパラメータを用いたEes/Eaの関係式と、ヒトから得られたパラメータを用いた同関係式の比較を行ったが、ヒトのデータが不十分であることが明らかとなり、動物実験の係数を臨床応用することに決定した。計算結果の値のばらつきが大きいという問題は、一心拍毎の連続測定により、一定期間の平均値を求める方法を採用することに決定した。試作器完成後、実際に手術している8症例の心電図、動脈圧波形、心音図の全経過をアナログテープレコーダにて記録すると同時に、カード型A/Dコンバータを装着した試作器によって、オンラインでデータ解析をして、Pmを用いたEes/EaとPesを用いた値を同時に表示することに成功した。 一方、経胸壁心臓超音波診断装置によって一回拍出量を求め、同時に血圧脈波検査装置によって得られた4つのパラメータから計算したEes/Eaと組み合わせ、Voをゼロと仮定してVedを求めた。これを、経胸壁心臓超音波診断装置で得られたVedと比較して測定精度を向上させた。 以上より、今後、動脈圧波形から一回拍出量を算定し、心電図と心音図とも組み合わせることによりVedをオンラインでモニタできる見込みである。
|