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2014 年度 実施状況報告書

吸入麻酔薬によるエピゲノム変化が癌細胞に及ぼす影響の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26670685
研究機関名古屋大学

研究代表者

石田 祐基  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10718315)

研究分担者 千賀 威  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80419431)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード吸入麻酔薬 / セボフルラン / トランスクリプトソーム網羅解析
研究実績の概要

平成26年度に我々は吸入麻酔薬が癌の再発、浸潤に影響を及ぼすかどうかを明らかにするため、一般使用されている吸入麻酔薬であるセボフルランの暴露を行い、各種ヒト癌細胞株が示す増殖率の変化を中心に解析を行った。その結果、吸入麻酔薬であるセボフルラン暴露後の細胞増殖率・細胞死率(以下アポトーシス)は各臓器による傾向はあるものの、細胞株の種類によって異なる感受性を示すことを明らかにした。一方アポトーシス率の変化はアポトーシスの指標でもある細胞の収縮、核クロマチン凝縮及び核濃縮などの細胞形態について検討したところ、吸入麻酔薬セボフルラン暴露時間と細胞死では強い相関を見られなかった。さらに我々は細胞増殖についてヒト大腸癌細胞株が吸入麻酔薬のセボフルランに高い感受性をもつということを確認することができた。特に癌抑制遺伝子の有無の違いは、短期的な細胞増殖率に明らかな差は見られないものの、長期的な細胞増殖率の変化に強い相関を示すという結果を得た。

これらの結果から吸入麻酔薬セボフルランの長時間暴露によって引き起こされる細胞増殖率の変化は、癌抑制遺伝子やアポトーシス関連遺伝子などの制御機構がエピゲノム修飾によって破城したものであると仮説と立てた。

そこでこの仮説を実証するために我々は、吸入麻酔薬セボフルランの暴露時間とヒト大腸癌細胞株などのより詳細な細胞増殖率の検討を進めるとともに、次世代シークエンサーによる遺伝子発現の精査を行うため、セボフルラン暴露時間が異なるサンプルによるトランスクリプトソームの網羅解析に取り組んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究においては、吸入麻酔薬セボフルランとヒト癌細胞株の増殖率の変化が最も重要な指標である。この増殖率の変化を明らかにすることによって、周術期に大量に使用される吸入麻酔薬と癌の再発・浸潤への懸念の一部を明らかにすることができる。一方癌細胞株の増殖と吸入麻酔薬暴露の関連についての報告が近年散見されている。しかし報告されている吸入麻酔薬と癌細胞株の増殖率の違いは各論文によって大きく異なり各研究者間での解釈が異なっている。この考えられる主な原因として、吸入麻酔薬への感受性が各細胞間で異なる点、また同一細胞でも細胞播種密度などによってその結果に影響を与える点などが考えられる。このような点から我々も安定した結果を得るための条件設定に時間がかかり、当初の計画よりもその進行がやや遅れることとなった。

今後の研究の推進方策

我々は吸入麻酔薬セボフルランの暴露によって生じる細胞増殖率の変化が、エピゲノム修飾によるとする仮説を実証するために、まず吸入麻酔薬暴露時間ごとの各種細胞株の細胞増殖解析を行った。そこで平成27年度は受託解析を行ったヒト大腸癌細胞株とセボフルラン暴露時間の違いによるトランスクリプトソームの網羅解析をさらに推し進める。その上でこれらの癌抑制遺伝子やアポトーシス関連遺伝子の制御機構の破城機序がエピゲノムによるものかどうかを明らかにしていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度には吸入麻酔薬セボフルラン暴露によって生じる、ヒト大腸癌細胞株のトランスクリプトソームの変化を網羅解析するために、民間会社にトランスクリプトソームの網羅受託解析を依頼した。しかしそのデータの納期が平成27年度に発生することとなり、その受託解析の費用を確保するため次年度使用額を生じることとなった。

次年度使用額の使用計画

平成27年度はトランスクリプトソームの網羅受託解析を行い、ヒト大腸癌細胞株とセボフルラン暴露による細胞増殖率の変化の作用機序解明をさらに推し進める。さらにセボフルラン刺激を受けた、これらの癌抑制遺伝子やアポトーシス関連遺伝子の制御機構の破城機序が、エピゲノム修飾によるものかどうかを明らかにしていくために、細胞周期関連遺伝子の遺伝子発現をchipアレイ解析する予定である。

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公開日: 2016-05-27  

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