研究課題/領域番号 |
26670686
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
正田 丈裕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60335263)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝移植 / 再灌流症候群 / 血管弛緩物質 / 予測因子 |
研究実績の概要 |
肝移植門脈再灌流時に発生する著明な血圧低下、いわゆるPost-reperfusion syndrome(PRS)のメカニズムを明らかにする目的で、肝移植の再灌流前後に肺動脈カテーテルから採取した血漿サンプルをモルモット胸部大動脈や腸間膜動脈のリング状標本に投与した。その結果、再灌流前後の血漿の投与後にのみ内皮依存性弛緩反応を示し、その弛緩反応がATP受容体であるP2Y1受容体拮抗薬MRS2179の前投与で消失することを昨年報告した。さらにATP自身もこれら血管標本を弛緩させ、ATPがPRSを引き起こす候補因子であることを報告した。 しかしながら、実験を繰り返すうちに再灌流前の血漿でも弛緩反応を示したり、再灌流前後を問わず逆に収縮する結果になることもあり、再現性が疑われた。ただし、弛緩反応はATP受容体拮抗薬で抑制された。 ATPは採血の際にずり応力で赤血球から放出されることが報告されており、さらに容易に代謝されてアデノシンになることも知られている。したがって、血漿サンプルによるこの血管弛緩反応はPRSの結果ではないことが予想される。また、手術中に投与されたフェニレフリン、ノルアドレナリン等の血管収縮物質がこれらの結果を修飾している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年の結果が偽陽性であることが判明したため、現在再灌流後の血漿のみ弛緩反応を示す血管(他の動物種や臓器の血管)を模索しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、再灌流後血漿にのみ弛緩反応を示す他の動物種や臓器の血管サンプルを模索している段階であるが、当初の実験プランを変更する必要があるかもしれない。 肝グラフトの血管を臓器保護液で潅流保存した際に放出される物質は、類洞血管内皮やクッパー細胞由来であることが予想される。実験動物のこれらの細胞を初代培養して、冷却された臓器保存液に浸すことにより産生される物質を検索する等の実験モデルを考慮している。 また臨床研究として、生体肝移植におけるPRSの予測因子が年齢であるというパイロット研究を昨年報告したが、パワー解析によって標本数を計算した上での解析を予定している。
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