新生児低酸素症時の100%酸素蘇生による脳神経発達への影響を検討した。生後7日目のマウスに8%酸素1時間曝露後、30分間の100%酸素及び空気で蘇生を行い、脳神経発達に及ぼす影響を、脳エリスロポイチン、脳由来神経栄養因子、脳アポトーシスおよび、成長後の8方向迷路学習を使って学習機能から検討した。実験では、生後7日目の雄マウスを対象に、低酸素ボックスで8%酸素1時間曝露後に、100%酸素30分間曝露(HP100群)と空気30分間曝露(HP21群)に分けた。 1.100%酸素または空気曝露9時間後に脳を取り出し、脳由来神経栄養因子(BDNF)mRNA、エリスロポイエチン(EPO)mRNA、脳アポトーシスの指標であるcaspase-3 mRNA発現をreal time PCRで測定した。HP100群では有意に、caspase-3 mRNA発現が上昇したが、BDNF mRNAには有意差はなかった。一方、EPO mRNAは有意に低下していた。さらに7週間後の8方向迷路学習では、学習機能の低下がみられた。 2.8%低酸素後の100%酸素蘇生障害は、EPO (5000単位/kg)およびEUK-134 (10mg/kg)の前投与で、8方向迷路による学習機能障害は軽減した。 以上より、8%低酸素後の100%酸素による蘇生は、内因性エリスロポイエチンの反応性増加を抑制し、脳アポトーシスによる脳障害を修復できずに、その後の学習機能障害を引き起こしたと推測された。さらに、その後の学習機能障害はエリスロポイエチンの補充および活性酸素阻害剤により軽減できた。本結果は、新生児低酸素症時の100%酸素蘇生による脳神経発達障害機序の解明に役立つものと考えられる。
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