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2014 年度 実施状況報告書

新規神経栄養因子MANFの小胞体ストレス軽減作用を介した神経障害性痛治療の可能性

研究課題

研究課題/領域番号 26670692
研究機関京都府立医科大学

研究代表者

天谷 文昌  京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60347466)

研究分担者 大橋 憲太郎  岐阜大学, 工学部, 准教授 (50332953)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード痛覚過敏
研究実績の概要

本研究は新規神経栄養因子MANFが神経障害性痛発症に果たす役割を解明し、新たな治療戦略を確立することを目的としている。MANFはニューロンやアストロサイトに発現し、小胞体ストレスを抑制したり炎症性サイトカインの合成を抑制したりすることで神経保護効果を発揮すると考えられている。この目的のため、2015年度には①ラットにおける神経障害性痛モデルの確立②一次知覚神経におけるMANFの発現解析③一次知覚神経における小胞体ストレスマーカーGRP78の発現解析を行った。
ラット神経障害性痛モデルの確立:神経障害性痛モデルとして末梢神経損傷モデルと糖尿病性神経障害モデルを用いた。末梢神経損傷モデルとして第5腰椎脊髄神経結紮 (Spinal nerve ligation: SNL)モデル、糖尿病性神経障害モデルとしてストレプトゾトシン投与(STZ)モデルを作成した。いずれもモデルにおいてもvon Freyフィラメント刺激やradiant heat刺激に対する痛覚閾値の低下、すなわち痛覚過敏が発症することが確認できた。
MANFの発現解析
SNLモデルおよびSTZモデルラットと未処置ラットから後根神経節 (Dorsal root ganglion: DRG)および脊髄を摘出し、組織切片を作成、免疫組織化学法によりMANFの発現を解析した。その結果、MANFはDRGニューロンの特に小型C-fiberニューロンに発現していることが明らかとなった。一方、脊髄後角ニューロンにもMANFの発現は認められたが、アストロサイトやマイクログリアにおける発現は認めなかった。また、SNL、STZ、未処置ラットのDRGからmRNAを抽出し、リアルタイムPCRでMANF遺伝子発現の変化を観察したところ、SNLモデルでは有意な増加が認められた一方、STZモデルでは有意に減少していた。
一次知覚神経におけるGRP78の発現解析
免疫組織化学法によりGRP78の発現解析を行った。その結果、GRP78はDRGニューロンに発現していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

神経障害性痛モデルラットの作成については計画通り確立することができた。MANFの発現解析についても当初の計画通り免疫組織化学とリアルタイムPCRによる解析は終了した。今後、ウェスタンブロッティングによるMANFの定量を行いたい。また、小胞体ストレスマーカーの中ではGRP78の発現を免疫組織化学法によって同定し、DRGニューロンにおける発現を明らかにした。今後、他のマーカーであるCHOPなどとともにリアルタイムPCRやウェスタンブロッティングによって発現の変化を明らかにしていきたい。

今後の研究の推進方策

MANFおよびMANF中和抗体投与による痛覚閾値の変化
ラット髄腔内にPE10カニューレを挿入し髄腔内への薬剤投与を可能にする。カニューレ挿入後MANFまたはMANF中和抗体を投与し、経時的に痛覚閾値を測定する。現時点ではSNLモデルラットではMANF発現は増加しており、STZモデルで低下しているため、SNLモデルに対しては中和抗体を、STZモデルに対してはMANFを投与する予定としている。痛覚閾値は熱刺激(radiant heat 刺激)と機械刺激(von Frey刺激)を用いる。運動神経への影響を観察するためrotarod試験を行う。
MANFおよびMANF中和抗体による小胞体ストレスへの効果
MANFをSTZラット、MANF中和抗体をSNLラットに投与する。脊髄を採取し、OX42(マイクログリア活性化の指標)ならびにGFAP(アストロサイト活性化の指標)の発現量をウェスタンブロッティングと免疫組織化学法で評価する。また、DRGを採取し、mRNAとタンパクを抽出する。リアルタイムPCRとウェスタンブロッティングによりGRP78/BiP、CHOP、sXBP1の発現を定量し、SNLやSTZモデルで生じる小胞体ストレスがMANまたはMANF中和抗体の投与により抑制または促進されるか検討する。
MANFおよびMANF中和抗体の炎症性サイトカイン合成への影響
DRGを採取しタンパクを抽出する。炎症性サイトカインIL-1β、TNFα、IL-6の発現をウェスタンブロッティングおよび免疫組織化学法を用いて定量し、SNL/STZモデルにおいて増加する炎症性サイトカインの発現がMANFまたはMANF中和抗体の投与により抑制されるか検討する。

次年度使用額が生じた理由

本年度においては神経障害性痛モデルの構築とMANFおよびGRP発現解析を集中的に行ったため、GRP以外の小胞体ストレスマーカーの発現解析のための経費が必要としなかったため。

次年度使用額の使用計画

次年度にGRP以外の小胞体ストレスマーカー、とくにCHOPの発現を調べるため、リアルタイムPCRおよび免疫組織化学法による実験を行う。このための経費として次年度に繰り越しを行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Tumor necrosis factor-alpha induces expression of C/EBP-beta in primary afferent neurons following nerve injury2015

    • 著者名/発表者名
      Sasaki M, Hashimoto S, Sawa T, Amaya F
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 279 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2014.08.032

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 新規栄養因子MANFの一次知覚神経における発現と 神経障害モデルにおける発現変化2015

    • 著者名/発表者名
      山口陽輔
    • 学会等名
      日本疼痛学会
    • 発表場所
      熊本
    • 年月日
      2015-07-03 – 2015-07-04

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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