研究課題/領域番号 |
26670701
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大谷 浩 島根大学, 医学部, 教授 (20160533)
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研究分担者 |
松本 暁洋 島根大学, 医学部, 助教 (70346378)
小川 典子 島根大学, 医学部, 助教 (90598111)
古屋 智英 島根大学, 医学部, 助教 (40457172)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 奇形学 / 泌尿器 |
研究実績の概要 |
引き続き、腎および尿路系の位置・形態異常に関して、収斂伸張(CE)機構による上皮管腔構造の伸長、ならびにネフロン数の調節に関する機構を解析するため、基本となる細胞数等の厳密な計測と解析に加えて、発生中のマウス胎児に機能性腫瘍細胞を注入し、その効果を解析した。ネフロン数の増加については、ACTH酸性腫瘍細胞株AtT20細胞を注入・生着させる系を用いて、ネフロン形成が進行する胎生後期に注入し、ネフロン数への増減など組織形成への効果を検討し、出生後の腎機能、血圧等への影響を対照群と比較検討するための実験を進めた。その過程で、腫瘍細胞注入による生後の成長への効果が過大となる傾向を認めたため、注入時期を胎生後期とし、また子宮内注入により経腟分娩を可能として、生後成長への影響を最小にとどめるように実験系を改良して実験群を作成し、組織学的解析を進めている。これにより、本実験系は泌尿器系に留まらない臓器系の器官・組織形成機構の解明と治療・予防法の開発に有用であることが示された。尿管におけるCE機構については、尿管伸張機構について厳密な細胞数、細胞増殖の計測を行い、尿管伸張にCE機構が関与する証拠となる知見を得た。さらに幹細胞増殖調節機構であるinterekinetic nuclear migration の尿管上皮における存在とその発生時期による変化を明らかにし、これにより増殖した幹細胞がCE機構のみならず長軸方向への移動により尿管伸張と腎臓の組織形成にも関わることを示唆する知見を得た。これらの基礎情報は、子宮外・内発生法による実験から得られる結果を的確に解析し、器官・組織形成機構を解明するための重要な基盤となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮外発生法および子宮内胎児注入法を用いて機能性腫瘍細胞をマウス胚に注入して生着させ、腫瘍細胞が分泌するACTHによるネフロン数他組織形成への効果を調べる実験を、生後成長への効果を観察しつつ注入時期・方法を調整・改良し、方法論をほぼ確立することができた。尿管が伸張して腎臓が「上昇」する器官形成期については、総細胞数等の計測・解析から、CE機構が関わること、さらにその前提となる組織幹細胞数の調節に関わるinterkinetic nuclear migration (INM)が尿管にも存在し、さらに発生時期により差異があることを確認し、尿管伸張にも関係すること示唆的所見を得た。これらは器官・組織形成機構の実験的解明の重要な基盤となる知見であり、全体としておおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
子宮外・子宮内発生法によるマウス胚への腫瘍細胞注入実験を進め、実験方法を最終的に確立し、腎臓におけるネフロン数の増減等のみならず他の臓器の組織形成に与える影響を調べ、他の臓器系への応用・展開について検討する。さらに出生後、児を成長させ、疾病と胎生期・新生児期に確認された組織形成における変化との関連を調べる。 腎臓の「上昇」など器官形成期については、INMなど基本的情報についての新知見をまとめた論文を発表したが、その後確認できたCE機構など知見等を続報として論文発表し、さらにそれを基盤情報として尿管周囲への注入実験を引き続き行い、効果を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織形成期の子宮外および子宮内発生法による注入実験は予定通り行ったが、器官形成期については引き続き基礎的知見の確認のための観察実験を主に行ったため、薬品、実験動物の購入量が減少した。また、旅費を使用しなかった為、繰越額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は注入実験回数を増やすため、それに必要な薬品、実験動物を購入予定である。また結果解析のため、組織作製用のガラス器具、抗体等薬品を購入予定である。
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