研究課題
今年度は、26年度にひき続き、東北大学病院の子宮体がん手術症例から漿液性腺癌などを除く類内膜腺癌症例の抽出と解析を行った。具体的には、(A)内膜増殖症の併存の頻度、位置関係、および内膜増殖症の種類と広がりの程度(B)萎縮内膜の併存の頻度、および位置関係、移行部分が存在するかの確認(C)萎縮内膜から癌へ移行する部分が存在するかの確認(D)閉経前症例と閉経後症例での、内膜増殖症の形態の相違の確認(E)内膜増殖症併存症例と非併存症例での、臨床疫学的因子の相違、などに関して臨床病理学的検討と評価を中心に検討を行った。また、一部の症例では、がん組織中に形成された高エストロゲン環境により、周囲に内膜増殖症が形成されているのかどうか、という本課題を解明するため、estrogenおよびandrogenの代謝酵素群(17β-hydroxysteroid dehydrogenase type2(17β-HSD2)など)や性ステロイド核内受容体に関して、免疫組織学を中心とした検討を行い、estrogenおよびandrogenの組織中濃度との相関、閉経の有無を含む臨床病理学的因子や予後との相関を検討した。今年は特に組織中エストロゲン濃度を司ると考えられる17β-Hydroxysteroid Dehydrogenase type2に着目し、その発現に対するアンドロゲンの影響などに関し検討を進めた。その結果、類内膜腺癌症例において、17β-hydroxysteroid dehydrogenase type2の発現動態は、5α-dihydrotestosterone (DHT)により制御されている可能性が明らかとなった(第16回ホルモンと癌研究会 ワークショップ2015)。
2: おおむね順調に進展している
本研究の基盤をなす子宮内膜癌手術症例からの類内膜癌症例の抽出及び臨床病理学的検討と評価は、順調に進んでいる。また類内膜腺癌でのestrogenおよびandrogenの組織中濃度と臨床病理学的因子との相関の検討、さらにestrogenおよびandrogenの代謝酵素や性ステロイド核内受容体の発現動態と、estrogenおよびandrogenの組織中濃度および、閉経の有無を含む臨床病理学的因子や予後との相関の検討も進行している。これまで得られた成果の一部はすでに論文あるいは学会発表として公表しており、研究はおおむね順調に推移している。
26年度、27年度にひき続き、類内膜癌症例の抽出集積及び臨床病理学的検討と評価を行う。最終年度であるため、この作業は年度前半までとし、後半はデータ解析を進める。集積された症例に対するestrogenおよびandrogenの組織中濃度測定、さらにestrogenおよびandrogenの代謝酵素や性ステロイド核内受容体の免疫組織学的検討をひき続き行うとともに、性ステロイドホルモン関連酵素活性およびmRNAの測定、サイトカインアレイによるサイトカイン測定、遺伝子変異発現の検討と評価も行い、これまで得られたデータ、特に5α-reductaseおよび17β-hydroxysteroid dehydrogenase type2に関する意義、と合わせて解析を行う。これらの臨床病理学および性ステロイド動態を中心とした検討により、閉経後類内膜腺癌の性格がより明らかになると考えられる。
本年度は、26年度と同様に、本研究の基盤をなす子宮内膜癌手術症例からの類内膜癌症例の抽出及び臨床病理学的検討と評価が中心であったため、実験用の消耗品を中心とした物品費に充てる金額は当初予想よりも少なくなった。
集積された類内膜癌症例に対するestrogenおよびandrogenの組織中濃度測定、さらにestrogenおよびandrogenの代謝酵素や性ステロイド核内受容体の免疫組織学的検討をひき続き行うとともに、性ステロイドホルモン関連酵素活性およびmRNAの測定、サイトカインアレイによるサイトカイン測定、遺伝子変異発現の検討と評価などの研究に使用する予定である。また、研究成果の発表と投稿にも費用を当てる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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