研究課題
細胞老化はテロメア短縮やDNA 損傷等の細胞ストレスで起こるため、細胞に備わるストレス応答の1 つと考えられる。老化細胞の蓄積が組織や個体に悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、組織や個体の恒常性維持のためには老化細胞が除去される必要があると考えられるが、正常組織中の老化細胞の誘導及び除去機構、またその仕組みの破綻と疾患との関連は不明である。マウス妊娠子宮に老化細胞が生理的に出現することや、その過剰な蓄積が早産という子宮機能異常と関連すること、妊娠子宮の細胞老化が亢進した子宮特異的p53欠損マウスが早産をきたすことから、本研究ではこの動物モデルを用いて、分娩前後のマウス子宮に生理的に存在する細胞老化との除去機構と、その破綻による次回妊娠におこる表現型を調べた。その結果、分娩後のマウス子宮の胎盤剥離部位には老化細胞が残存し、徐々に細胞老化領域が減少して分娩後約1か月で消失した。分娩後子宮における白血球の局在を観察すると、F4/80陽性マクロファージが細胞老化領域周囲に集積した。マウス分娩後に抗F4/80抗体投与によるマクロファージ除去を行うと子宮の細胞老化領域の増大が認められた。さらにp53欠損早産マウスにおいて、分娩後子宮の老化細胞の増加と分娩直後の交配による妊娠率の低下を認めた。p53欠損早産マウスでは老化細胞周囲に集積するF4/80陽性細胞の減少と、老化細胞領域内におけるM1マクロファージのマーカーの1つであるCD11b陽性細胞の増加を認めた。本研究により、分娩後子宮におけるF4/80陽性マクロファージを介した老化細胞の除去機構の存在と、M1優位のマクロファージ極性変化に由来する老化細胞の蓄積によって子宮機能障害が起こることが示唆され、分娩後子宮における老化細胞の過剰な残存が子宮機能回復へ影響している可能性が明らかとなった。
Haraguchi H, et al. Mol Endocrinol論文が, Nature Reviews EndocrinologyのResearch Highlightで紹介された(Nature Reviews Endocrinology 10, 445, 2014.) 。第29回日本生殖免疫学会での江頭真宏らの演題が学会賞および最高得点演題賞を受賞した。
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