ARTによる妊娠では、同年代の自然妊娠例と比し、その分娩時に多量出血を来す例が多く認められる。分娩時には胎盤基底膜板の構成要素である基底脱落膜で胎盤が子宮より剥離、娩出され、その際の出血は分娩時の総出血量に少なからず影響をおよぼす。胎盤基底膜板を組織学的に分析し、ART と自然妊娠例の比較、ART手技による胎盤の形態学的な違いについて検討した。ホルモン負荷周期凍結胚移植による妊娠では自然妊娠に比較して基底脱落膜の菲薄化や欠損が優位に高く妊娠初期の人工的な内分泌学的環境は胎盤-子宮付着部の構造や機能を変化させる原因となり分娩時出血量の増加に影響を与えている可能性が示唆された。
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