研究課題
1.子宮内膜間質細胞(hESC)の初代培養当科では年間約500件の婦人科手術を行っており、子宮筋腫など良性疾患で摘出した子宮内膜およぶ卵巣チョコレート嚢胞よりhESCを採取し初代培養を行った。2.腹膜中皮細胞の初代培養事前に同意を得た卵巣癌患者より手術の際に10センチ平方程度の大網を摘出、はさみで細切し、コラゲナーゼ処理を行うことにより腹膜中皮細胞で採取する。3.細胞よりのエクソソーム抽出のプロトコール作成本研究の最終目標は腹膜中皮細胞よりのエクソソーム抽出であるが、初代培養系であり、継続した培養は不可能であり、第一段階として、培養が容易な卵巣癌細胞株 HeyA-8 を用いてエクソソームの抽出プロトコールの作成を行った。得られた小胞がエクソソームであるかどうかの確認を抗 CD63 抗体を用いた免疫染色を行い電子顕微鏡で確認した。
2: おおむね順調に進展している
初年度はまず初代培養の実験系を主に確立する予定であった。計画通り、子宮内膜間質細胞および腹膜中皮細胞の初代培養系は確立したため、おおむね順調に推移していると判断した。
① 今年度は計画通り、初代培養した子宮内膜間質細胞と腹膜中皮細胞の共培養実験を行い、以下の項目の検討を行う。1.腫瘍形成能。a. アガロースゲル上で培養し足場非依存性のコロニー形成能をみる。b. 細胞をマトリゲルに封入した上で、免疫不全マウスに皮下移植して腫瘍形成の有無をみる。2.接着能 - インテグリン、CD44など接着因子の発現変動をFACS で解析する。3.運動能、浸潤能‐Boydem Chamber を用いた in vitro migration, invasion Assay を行う。② 初代培養している腹膜中皮細胞が放出するエクソソームを回収し、以下の検討を行う。1.腹膜中皮細胞由来のエクソソームの子宮内膜細胞への取り込みの有無の検討。採取したエクソソームを緑色色素PKH67 (Sigma)で蛍光標識した上で、hESCの培養上清に添加し、48時間後、細胞に取り込まれているかどうかの確認を行う。具体的には細胞のアクチン骨格をAlexa-555 Phalloidin (Invitrogen)で赤色染色し、共焦点蛍光顕微鏡で、エクソソームの取り込みと同時にその局在を確認する。2.腹膜中皮由来エクソソームに含まれるmiRNA およびサイトカインの解析。上記の実験で、エクソソームによるhESCの“内膜症細胞化”が証明できれば、エクソソームよりどのような情報伝達がなされるかを検討する。具体的には miRNA およびサイトカインの両面から網羅的解析を行い検討する。エクソソームより、RNAを抽出し、そのexosomal miRNAのプロファイルを TaqMan Array Human MicroRNA Cards (Applied Biosystem) を用いた miRNA RT-PCR Array 法で検討する。コントロールとして、腹膜中皮細胞と hESC の cellular RNA を用い、exosomal RNA において、発現が2倍以上増加している miRNA をピックアップする。そして、そのmiRNAの発現が“子宮内膜症化”した共培養後の細胞で増加しているかどうかを Taqman miRNA assay で検証する。
今年度、順調に研究費は消費したが結果11290円の残金が発生した。
次年度の物品費にあてる予定である。
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Mol Cancer Ther
巻: 14 ページ: 909-19
10.1158/1535-7163.MCT-14-0696