研究課題
子宮内膜症は生殖年齢女性の約10%に発生するCommon disease であり、その克服は女性の生活の質(QOL)に留まらず、少子高齢化に悩む我が国の社会に重大な意義をもつ。今回の研究では、子宮内膜細胞が腹腔内に逆流する際に卵管上皮や腹膜中皮細胞と接触する過程で、これらの細胞からの情報伝達を受けて、いわゆる“子宮内膜症細胞”に進化するのではないかとの仮説のもとに、その情報伝達が細胞より放出される小胞体の一つであるエクソソームを介してなされると考え、細胞分泌型のエクソソームの伝達機構の解明を行った。研究計画通り、超遠心法で初代培養した腹膜中皮細胞でのエクソソームの抽出を行ったが、細胞数の問題もあり、初代培養からの安定した抽出は困難であった。そこで、まずはがん細胞からの安定したエクソソームの抽出に切り替えて、漿液性卵巣癌細胞株HeyA-8およびTYK-nu そしてコントロールとして不死化した正常卵巣上皮細胞(IOSE)を用いてエクソソームを抽出した。超遠心法により、1x108個の卵巣癌細胞から、50μg程度のエクソソームを抽出することができた。さらにその機能解析を行うべく、初代培養した腹膜中皮細胞への添加実験を行った。エクソソームを蛍光色素であるPKH67 (Sigma)で標識し、蛍光顕微鏡でエクソソームの腹膜中皮細胞への取り込みを確認した。さらに細胞の形態を観察したところ、もともと敷石上の腹膜中皮細胞が、紡錘状に変化していた。そこで詳細な解析を加え、エクソソームにCD44が含まれること、腹膜中皮細胞にそのCD44が伝達されること、それにより、腹膜中皮細胞の上皮間葉移行が起こっていることを確認した。すわなち、エクソソームが細胞間の情報伝達の鍵となっているその一つのメカニズムを解明した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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