研究課題/領域番号 |
26670726
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
杉野 法広 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10263782)
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研究分担者 |
城崎 幸介 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80721323)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メラトニン / 卵巣 / 加齢 / 酸化ストレス / 卵 |
研究実績の概要 |
メラトニンを思春期に相当するマウス8週齢から更年期に相当する42週齢までの約8か月間にわたり長期間投与することによって、加齢による卵子の数の減少や卵子の質の低下を食い止めることができるかという課題にチャレンジしている。 10週齢雌ICRマウスをメラトニン投与群とコントロール群の2群に分け、33週または43週まで同一条件下で飼育した。メラトニン投与群はメラトニン水(100μl/ml)を、コントロール群は水を飲水させ飼育した。33週または43週齢でPMSG(15 IU)による過排卵刺激を行い、48時間後HCG(15 IU)を投与、15時間後に卵巣、卵管を採取した。1.) 卵管内より卵子を回収し排卵数を計測した。排卵数は、コントロール群(33週:10.4±6.4個、43週:6.4±1.1個)、メラトニン投与群(33週:19.0±10.0個、43週:11.6±3.2個)とメラトニン投与群で多かった。2.) 卵子に雄マウスより採取した精子を媒精(10x104個/ml)して体外受精を行ない、24時間後に受精を確認した。体外受精の受精率は、コントロール群(33週:52.9%、43週:21.4%)、メラトニン投与群(33週:67.4%、43週:50.9%)とメラトニン投与群で高値であった。3.) 43週の卵細胞内ATP量はコントロール群:52.9±8 nM、メラトニン投与群:47.3±11 nMと差は認めなかった。 この排卵数の増加の原因として卵巣組織内の原始卵胞を計測したところ、メラトニン投与群で有意に原始卵胞数の増加が認められた。すなわち、メラトニンは原始卵胞数の加齢に伴う減少を防止したと考えられる。 メラトニンの長期投与によって、排卵数の増加、受精率の上昇がみられ、メラトニンの投与によって卵巣の加齢を軽減できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果から、メラトニン長期投与が、抗酸化作用を介して、加齢に伴う原子卵胞数の減少や卵子の質の低下を予防できることを示す成績が得られ、本年度の研究目的を概ね達成することができた。したがって、来年度の研究である「メラトニンによる作用機序のマイクロアレイを用いた網羅的検討」など、メラトニンの作用機序の分子メカニズムの解明に繋げることができた。 本研究におけるメラトニン長期投与の実験モデルは、メラトニンを投与し始めてから約8ヶ月間という長期間を要する実験であるため、平成25年度においてすでに実験動物を購入していた。その他の実験器具や試薬等も現存するものがあり、新規に購入する必要はなかった。そのため執行額が0円であったが、研究の到達度として、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メラトニン長期投与の実験モデルは、約8ヶ月間という長期間の実験である。したがって、効率よく実験モデルを作成するため、担当する大学院生との連携をより密にする。さらに、研究分担者や連携研究者とのディスカッションも密にするほか、研究室カンファレンスでの参考意見も積極的に取り入れ、さらに大学院生の指導も強化して、研究がより効率的に進むようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究におけるメラトニン長期投与の実験モデルは、メラトニンを投与し始めてから約8ヶ月間という長期間を要する実験であるため、平成25年度においてすでに実験動物を購入していた。そのため、本年度に使用する実験動物の購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、本研究において最も重要な計画である「メラトニンによる作用機序のマイクロアレイを用いた網羅的検討」、「種々の臓器における代謝調節の変化を介した寿命延長機構の探索」や「オートファジーを介した卵の寿命延長」などの研究を行う予定であり、本年度の未使用額はこれら27年度に行う研究の研究費と併せて、消耗品の購入にあてる予定である。また、本年度は研究成果の達成度から、参加を予定していた米国生殖医学会に参加しなかったが、未使用額は平成27年度の学会に係る旅費、参加費と併せて使用する。
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